Up 「物体の温度」の定義 作成: 2023-09-17
更新: 2025-02-17


    物体を,集合 \( X \) の要素の分布と考える。
    各分布 \( s \) は,各要素にスピンを対応させる関数 \( s \) である。

    「各要素にスピンを対応させる」には,<場合の数>が対応している。
    要素の数は多く,スピンは一般に多次元でありかつ各次元で多値である。
    よって,<場合の数>は途方もなく大きいものになる。

    分布 \( s \) に対し,これの<場合の数>の自然対数を \( s \) のエントロピーと呼び, \( e( s ) \) で表す。


    物体は「無常」である。
    この「無常」を,分布の時間的変化 (「流れ」) として考える。

    集合 \( X \) の要素の分布全体の集合を,\( D \) とする。
    時刻を1つ,時刻0として固定する。
    時間を1つ,時間の単位 \( u \) として固定する。
    流れは,関数
      \[ f : \mathbb{R} \longrightarrow D \]
    として,つぎのように定義される:
      \( x \in \mathbb{R} \) に対し \( f( x ) \) は,時間0からの経過時間が「\( u \) の \( x \) 倍」のときの分布


    流れ \( f \) は,つぎの関数 \( f_e \) を導く:
      \[ f_e = e \circ f : \mathbb{R} \longrightarrow \mathbb{R} \]

    場合の数は,途方も無く大きくとも,有限である。
    よって, \( f_e \) は階段関数になる。
    しかしその段差は, \( f_e \) の最大最小の幅と比べると,きわめて小さいと見られる。
    そこで, \( f_e \) を「滑らか」即ち「微分可能」ということにする。


    ここに至って,「物体の温度」を定義できることになる。
    即ち,「物体の温度」を「分布 \( f( x ) \) の温度 \( T( x ) \)」として,つぎのように定義する:
        \[ T( x ) = \left| \frac{ d f_e ( x ) }{ d x } \ \right| \]

    ここで定義した温度は,1次元実ベクトル (正負の実数) の絶対値であり,0以上の正値である。 ──この「温度0」が, 「絶対零度」。
    そしてつぎのようになる:
      分布の変化がエントロピーの大きな変化になるところで,温度は高い。

    念のため:
      温度ベクトルの正負は,日常生活で使っている温度の「プラスマイナス」ではない。


    「エントロピー」に見ている意味は,「乱雑さ」である。

    物の温度は,分布の時間的変化 (流れ) から導かれた。
    そのとき,流れは「エントロピーの流れ」に表現された。
    温度の定義は,エントロピーの変化率を温度ベクトルと定義するものである。
    これは,「乱雑さの変化速度」を温度ベクトルと定義したわけである。