- 「散逸 dissipation」の意味
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Prigogine & Stengers『混沌からの秩序』
pp.172
カルノーのサイクルは、‥‥19世紀に発見された二大普遍性、つまりエネルギー変換と熱伝導の合流点となった。
これら二つの発見を組み合わせることによって、トムソンは新しい原理を定式化することに成功した。
それは、自然界では力学的エネルギーは減少する普遍的傾向がある、というものである。‥‥‥
ラプラスの世界は永遠であり、理想的な永久機関であった。
トムソンの宇宙論は、単に新しい理想熱機関を反映しただけでなく、エネルギーが保存される世界の中に、不可逆な熱伝導の結果を取り込んだものでもある。
この世界とは,ある程度の不可逆な廃棄と使い道のない散逸とを代償にして、熱が運動に変換される動力機関である、といえる。
何か効果を生むような、自然界における差は、次第に減少してゆく。
世界は、変換を次々に重ねるにつれ、その差を使い尽くし、最終状態である熱平衡、「熱的死」へと向かう。
フーリエの法則の通り、最後には、力学的効果を生み出す温度差が全くゼロになってしまう。
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- 「散逸 」の量
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薪が燃えて灰になる。
このとき,熱に変化した質量分だけ,質量が減っている。
減少した質量は,割合としてごく僅か──100億分の1レベル──である。
燃焼に対しては「エネルギー蕩尽」のイメージをもつが,「散逸」の量でいえば大したものではない。
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- 参考サイト
- 参考文献
- Prigogine, Ilya & Stengers, Isabelle : Order out of chaos ─ Man's new dialogue with Nature.
Bantam Books, 1984.
伏見康治・他[訳]『混沌からの秩序』, みすず書房, 1987.
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