Up エネルギー散逸 作成: 2017-09-11
更新: 2018-01-03


  • 「散逸 dissipation」の意味
       Prigogine & Stengers『混沌からの秩序』
    pp.172
    カルノーのサイクルは、‥‥19世紀に発見された二大普遍性、つまりエネルギー変換と熱伝導の合流点となった。
    これら二つの発見を組み合わせることによって、トムソンは新しい原理を定式化することに成功した。
    それは、自然界では力学的エネルギーは減少する普遍的傾向がある、というものである。‥‥‥
    ラプラスの世界は永遠であり、理想的な永久機関であった。
    トムソンの宇宙論は、単に新しい理想熱機関を反映しただけでなく、エネルギーが保存される世界の中に、不可逆な熱伝導の結果を取り込んだものでもある。
    この世界とは,ある程度の不可逆な廃棄と使い道のない散逸とを代償にして、熱が運動に変換される動力機関である、といえる。
    何か効果を生むような、自然界における差は、次第に減少してゆく。
    世界は、変換を次々に重ねるにつれ、その差を使い尽くし、最終状態である熱平衡、「熱的死」へと向かう。
    フーリエの法則の通り、最後には、力学的効果を生み出す温度差が全くゼロになってしまう。

  • 「散逸 」の量
      薪が燃えて灰になる。
    このとき,熱に変化した質量分だけ,質量が減っている。
    減少した質量は,割合としてごく僅か──100億分の1レベル──である。
    燃焼に対しては「エネルギー蕩尽」のイメージをもつが,「散逸」の量でいえば大したものではない。
      註:質量とエネルギーの関係:E = mc2


  • 参考サイト
  • 参考文献
    • Prigogine, Ilya & Stengers, Isabelle : Order out of chaos ─ Man's new dialogue with Nature.
        Bantam Books, 1984.
        伏見康治・他[訳]『混沌からの秩序』, みすず書房, 1987.