ガンマ線以外の宇宙線はほぼ光速で運動しています。
ある粒子の速さ \( v \) が光速 \( c \) に近いというのは、その粒子のもつ運動エネルギー \( K \) が非常に大きいということです。
特に運動エネルギーがその粒子の静止質量 \( m_0 \) を大きく上回るとき(\( K\, >> \, m_0c^2\))、その運動は相対論的であると言います。
例えば陽子は静止質量 \( m_0 = \)1.661 × 10-27 kg を持ち、これをメガ電子ボルトに換算すると 938.3 MeV/c2という質量(エネルギー)に相当します。
もし宇宙線陽子が 10 GeV(= 104 MeV)の運動エネルギー \(K\) を持っていたとすると、次の関係が成り立ちます。
\[E = m_0 c^2 \frac{1}{\sqrt{1 - v^2/c^2}}\]
\[K = E - m_0 c^2\]
\[\therefore v \simeq 0.9963c\]
つまり、10 GeV の運動エネルギーを持つ宇宙線陽子は光速の 99.63% で移動しているということです。
このような高いエネルギーの粒子を扱う場合、私たちは電子ボルト(electronvolts、eV)という単位を使います。1 eV は電子が 1 ボルトの電圧で加速されるときに受け取るエネルギーに相当します。
地球から最も離れた場所に存在する宇宙線検出器はボイジャー探査機(1 号と 2 号)です。
太陽系内の宇宙線陽子は、ボイジャーでは運動エネルギーが 1 MeV(106 eV)程度のものまで測定されています。
これは光速の 5% 程度の速さしか持たず、宇宙線としてはかなり低エネルギーのものです。
一方、人類がこれまでに観測した宇宙線の最大エネルギーは 1020 eV を超えています。
これは粒子加速器を使って人工的に到達できるエネルギー 6.5 TeV(6.5 × 1012 eV)を 7 桁以上も上回るものです。
このような宇宙線の加速がどの天体で生じているのか、またその粒子が陽子なのかそれ以外のものなのかなど、これまでの観測結果からは未解明の問題です。
宇宙線は低エネルギー(109 eV)のものから最高エネルギー(> 1020 eV) のものまで、その到来個数がエネルギーのおよそ −3 乗にに比例することが分かっています。
したがって、エネルギーが上がれば上がるほど、地球に降り注ぐ宇宙線の個数は急激に減少するのです。
これら宇宙線のうち、1018 eV を超えるような宇宙線は銀河内の磁場で閉じ込めておくことができないため、銀河系外から飛来する宇宙線ではないかと考えられています。
例えばガンマ線バースト(gamma-ray bursts、GRBs)や活動銀河核(active galactic nuclei)が系外宇宙線の加速源ではないかと考えられていますが、確実な証拠はありません。
1018 eV 以下の宇宙線は銀河系内に存在する高エネルギー天体、例えば超新星残骸や銀河中心(Galctic center)で加速されたものであろうと考えられていますが、これもまだ確実な証拠がありません。
1010 eV 程度までは超新星残骸で加速されていること、1014 eV 近くまで銀河中心で加速されていることが観測で明らかになってきましたが、それ以上のエネルギーまで本当にこれら天体が宇宙線を加速できるのかや、これら天体のみで宇宙線の総量を説明できるのかも未解決の問題です。
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