|
和田信一郎『土壌学』, 12.4.1. 酸性土壌, p.208.
酸性土壌の研究の初期には,土壌溶液が酸性であること,つまり土壌溶液中の水素イオン(プロトン)濃度が高いことが,植物生育阻害の直接の原因であると考えられていた.
しかし,土壌学および植物栄養学の研究の進展に伴い,‥‥ [酸性はアルミニウムイオンの結果であり] 植物生育を阻害するのもアルミニウムイオンであることが明らかにされた.
作物の中で,コムギは特に酸性に弱いことが知られている.
しかし,養液栽培においては,すべての養分濃度が十分であれば養液のpHが4であってもコムギは生育することが,実験によって確かめられている.
一方土耕栽培では,土のpHが5を下回る場合には,コムギはほとんど生育しないことが多い.
酸性土壌におけるアルミニウムイオンによる生育障害の機構の全体像はまだわかっていないが,根の伸長および機能がアルミニウムイオンによって著しく阻害されることがわかっており,その機構として根の細胞あるいは細胞間の多糖類の構造形成に関与しているカルシウムイオンがアルミニウムイオンと置換されることによって生ずる構造及び機能の変化が関係していると推定されている.
|
|
|
同上, pp.208.,209
植物の中にはアルミニウムイオンに対する耐性を持っているものもある.
これはアルミニウムイオンによる刺激によって,細胞内でのクエン酸やリンゴ酸などの有機酸の生成が誘起されて細胞外へ放出され,放出された有機酸がアルミニウムイオンと錯体を作ることによって,多糖類への結合能力を喪失することによると考えられている.
|
|
|