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和田信一郎『土壌学』, 5.6.1. 層位の分化, pp.72,73.
一般に,分化した土層はA,B,Cというアルファベットで区別される.
A層とは有機物の集積層,かつ様々な物質が溶脱しつつある層である.
A層は一般に暗褐色ないし黒色であり,下層と比較すると暗色であるために,容易に肉眼で区別できる.
暗黒色のA層は,その大部分が有機物からなるのではないかという印象を与えるが,世界の多くの土では有機物含量は10%以下のことが多く,A層であっても大半は鉱物からなる.
森林などでは,A層の上に,落葉や落枝の層があることが多い.
この層はごく表面は新鮮な落葉落枝,下に行くにしたがって破砕,変質し,最下部でA層に接する.
この層はほとんど有機物からなる層位でありO層とよばれる.
O層は,落葉落枝の変質の程度によってL層,F層,H層に細分されることもある.
L層はほとんど変質していない落葉落枝の層,
F層はやや変質しているが,落葉落枝であることが肉眼で識別できる層,そして
H層は,何に由来するか識別できない程度に変質した有機物層である.
O層(そしてL,F,H層)は有機質層位とよばれ,それに対してA層(およびその下のB,C層)は無機質層位とよばれる.
A層では,落葉落枝の変質過程で生成した有機酸によって,酸化鉄鉱物などの微細な二次鉱物が溶解し,鉄やアルミニウムイオンは有機酸錯体の形で下層へ溶脱するという過程が進行する.
この反応が優勢になり,酸化鉄鉱物やその他の二次鉱物の相当部分が溶解,溶脱されると,石英などの安定な鉱物のみが残留し,その層が白色〜灰白色を呈するようになることがある.
このような層は漂白層とよばれ,E層という記号が当てられる.
B層とは上層から溶脱してきた物質の集積がみられる層である.
集積している物質の種類を示す添え字をつけて区別される.
代表的な集積物質とそれを示す記号は次のようなものである.
- 酸化鉄,水酸化鉄の結核(c)
酸化鉄,水酸化鉄,酸化マンガンなどの結核が散在する.
- 還元による斑紋(g)
地下水位が高かったり,人工的に湛水したりすると,生物の呼吸によって酸素が消失する.酸化鉄鉱物の三価鉄を電子受容体とする呼吸によって生成した二価鉄のため,土色が灰青色になった部分を生じている.
- 腐植物質(h)
層で生成した腐植物質が単独あるいは鉄やアルミニウム錯体として移動集積している.
- 固結(m)
鉄やアルミニウムの酸化物,水酸化物,炭酸カルシウムなどによって層全体が固結している.
- 酸化鉄や酸化アルミニウムの残留集積(o)
土の風化が極端に進行し,酸化鉄や酸化アルミニウムのみが残留したような状態になっている.
- 鉄やアルミニウムの酸化物や水酸化物(s)
上層から移行した鉄やアルミニウムが集積している.結核として散在するのではなく,層全体に集積している.
- 粘土(t)
上層から浸透水中に分散して移動してきた粘土粒子が集積している.
そしてC層とは,細粒の物質からなるが,有機物の集積や上層からの物質の移動集積が認められない層である.
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