Up | 人工生命 | 作成: 2019-09-02 更新: 2019-09-02 |
「高々物理」の内容がわかってくれば,フランケンシュタイン的に人工生命をつくろうとする者が出てくる。 しかし,人工生命の研究は,物理をパスした形もあり得る。 その形は,システム論である。 実際,人工生命の研究は,システム論として始まった。 この立場は,生命を「自己複製システム」と定める。 そこで,自己複製システムをつくることができたら,それは人工生命をつくったことになる。 嚆矢は,Von Neumann の "universal constructor" である。 これは,セルオートマトン形態の自己複製システムである。 Von Neumann はこれを,机上で設計した。 このプログラムがコンピュータに移植され,実際に生きるようになったのは,彼の死後である。 生物はそれぞれ特殊な場所に棲む。 人工物に適応しこれを自らの「自然」にしてしまった生物もいる。 したがって,コンピュータに棲みそして繁殖するプログラムも,「生命体」になり得る──即ち,これも生命体に含める「生命体」の概念が立ち得る。 その概念が「自己複製システム」というわけである。 コンピュータウィルスのようなものを生命体と呼ぶことに抵抗がもたれるのは,現前の生物を「本物」と見るからである。 しかし生物は,<自然の偶然>の産物である。 しかも,一系統である── DNA がその証しである。 この系統の外に無数の自己複製システムが現れそして消えていることになる。 それらもまた「生命体」と呼ぶのみである。 そして<人工>も<自然の偶然>うちであれば,コンピュータウィルスの類を「生命体」と呼ぶのもまた道理である。 |