Up 定年制度に対しても,執行部の都合を優位に 作成: 2009-02-26
更新: 2009-02-26


    大学執行部は,立場上どうしても,大学の私物化に慣れてしまう。
    すなわち,「大学の私物化」の感覚を麻痺させてしまう。

    大学の私物化の顕著なものが,人事の私物化である。
    そしてついに,定年制度に対しても,執行部の都合を優位におくようになる。
    これの想定される形を,一例として,以下に示す:

    特別教授規則(案)

     (趣旨)
    第1条 この規則は,○○大学における教育・研究の充実を図るため,特別教授を置くものとし,必要な事項を定める。
     (定義)
    第2条 この規則において「特別教授」とは,教育研究上特に必要と認められる場合に,優れた知識,技能及び経験を有する者として学長が認めるもので,本学運営規則
    第3条第3項に規定する教授として雇用される職員をいう。
     (定年の適用除外)
    第3条 特別教授は,教員人事規則第18条第3項の規定に基づき,定年の規定は適用しない。

     (雇用期間)
    第4条 特別教授の雇用期間は,採用の日の属する年度内とし,当初採用の日から5年を超えない範囲内で雇用を更新することがある。
    2 前項の規定による雇用の更新は,当該職員の年齢が満70歳に達する日以後における最初の3月31日を超えて行うことはない。
     (選考)
    第5条 特別教授の選考方法等については,別に定める。

    選考方法
     教授として採用 =  教員として選考する必要がある。
      → 新たな要項により選考する。
       (教育委員会との人事交流と同様)
      → 教員の選考は,教育研究評議会が行う。

     選考手順概略
    1. 特別教授の雇用を必要とする副学長等が理由を添えて学長に申請する
    2. 学長が役員会に雇用が必要かどうかを諮る
        雇用の必要がない → 却下
        雇用の必要がある → 3 へ
    3. 教育研究評議会に教員の選考を諮る
        本学教授退職者
          → 選考委員会における選考は行わない
          → 選考
        上記以外の者
          → 選考委員会の設置
          → 4へ
    4. 選考委員会で選考を行い,教育研究評議会に報告
    5. 教育研究評議会で投票により選考


    特別教授の選考等に関する要項(案)

     (趣旨)
    第1 この要項は,特別教授規則第5条の規定に基づき,国立大学法人○○大学(以下「本学」という。)の特別教授の選考方法等について,必要な事項を定める。
     (採用計画)
    第2 特別教授の採用を希望する副学長又は教職大学院長(以下「副学長等」という。)は,特別教授採用計画書(別紙様式1)により学長に協議する。
    2 学長は,提出された計画の内容を総合的に勘案の上,教育研究評議会嘩を経て,選考開始を決定する。
      → 「総合的に勘案」の中で,役員会に諮る等々を行う。
     (選考委員会)
    第3 特別教授の選考を行うため,教育研究評議会に選考委員会を置く。
    2 選考委員会は,次に掲げる委員で組織する。
     (1)選考を行おうとする講座等の教授4人。ただし,4人のうち選考を行おうとする専門分野の教授(以下「専門分野委員」という。)2人を含むことを原則とするが,講座等において専門分野委員を欠く場合は,専門分野の准教授(研究指導教員)又は専門分野以外の教授をもって充てることができる。
     (2)前号に定める講座等以外の教授2人
    3 委員は,研究指導教員でなければならない。
    4 講座等の人員構成上,第2項第1号に掲げる委員を構成することができない場合は,関連する講座等の教授をもって充てることができる。
    5 第2項第1号に掲げる4人の委員が,専門分野委員2人を満たす構成となっていない場合は,他校又は他大学の研究指導教員の意見を教員選考規則第8条第5項に規定する専門分野意見書により聴取しなければならない。
    6 選考委員会に委員長を置き,委員の互選により選出する。
    7 委員長は,選考委員会を招集し議長となる。
    8 選考委員会は,委員全員の出席がなければ,開くことができない。
    9 選考委員会の議事は,委員の3分の2以上をもって決定する。
    10 選考委員会は,候補者の選考に当たっては,教員選考規則第14条 及び第15条 の規定を準用する。
    11 選考委員会は,採用等候補者を選考したときは,教員選考規則第16条に規定する選考結果報告書により採用を希望する副学長等に報告し,副学長等は,教育研究評議会に報告する。
     (選考)
    第4 教育研究評議会は,副学長等の報告を基に,投票により採用等候補者の選考を行い,投票者の3分の2以上の賛成により決定する。
    2 学長は,前号の決定に基づき特別教授の選考を行う。
     (選考の特例)
    第5 特別教授候補者が,本学の退職者で,採用しようとする専門分野と同一の専門、分野の教授としての経歴を有するものである場合には,選考委員会における選考は行わず,教育研究評議会の選考にあっては,投票を要しない。
       附 則
     この要項は,平成○年○月○日から実施する。


    この問題では,「先人はなぜ<定年>という規則をつくったのか?」という,そもそものところを考えねばならない。
    先人はなぜ<定年>という規則をつくったのか?
    答えは,「規則にしないと人事がめちゃくちゃになるから。」である。

    人は組織の中にいると,馴れ合いになる。
    トップダウンに従うようになる。
    どうしてもこうなる。
    いちいち抗う姿勢を示すことが面倒くさくなるからだ。
    根気が無くなるのである。

    特に,人事は「出来レース」になる。
    上掲の規則の手続きは,「出来レース」で進行する。
    ひとはそれを「出来レース」と知っていても,これに加担する。
    実際,これが「出来レース」の意味である。


    定年制度は,つぎのタイプの知恵の一つである:
      <馴れ合いをやってしまう自分の弱さ>に
        組織・人が引き摺られないで済むようにしよう。
    実際,定年を定めることによって,ひとりの引き際の問題でぐちゃぐちゃしないで済むようになる。

    上掲の規則の機能は,定年延長人事をトップが恣意的にできるようにするということである。 これ以上でも以下でもない。
    (「規則」というものは,<論理的内包・外延>で考えるものであって,<だれかのこれに対する想い>で考えるものではない。)
    選考規則は,あって無いに等しい。
    なぜなら,選考は「出来レース」になるから。


    関連して,永久法と臨時措置法のことに触れておこう。
    上掲の規則は,永久法である。
    定年延長人事をトップが恣意的にできることを永久保証する規則である。

    仮に,退職者の「再雇用」という形でしか必要な人事ができない場合に対処するための規則を考えているのであれば,永久法の形ではなく特別法の形でつくるのが,良識/常識である。
    すなわち,『なになにのなになにをどうするための特別措置規則』のような長い名称にし,時限のものにし,そして,要件を限定的に細かく規定する。

    「イラク特措法」がよい例になる:
    • 『イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法』
    • 4年間の時限立法
    • 拡大解釈・恣意的適用を防ぐために,要件を限定的に細かく記述。