Up 「居座り」の一般力学 : 要旨 作成: 2011-06-02
更新: 2014-11-25


    「法人化」の学長は,制度的に,居座ることができる。

    法人化では,教員に対する懐柔策として,暫定的施策がいろいろとられた。 これの一つに,「意向投票」がある。
    意向投票は,教員はこれを「学長選挙」であるとした。
    しかし,教員による学長選挙は,国立大学法人法の逸脱になる。実際,違法である。
    意向投票で負けた現職学長は,<意向投票で負けた>を理由に辞職することはできない。
    加えて,「辞めることはできない」は「辞めなくてよい」に転じる。
    こうして学長は,<意向投票を無化して居座る者>となる。

    意向投票の無化は,意向投票を学長選挙と定めた教員に向かって自分たちを<覇者>として示す格好になる。
    《暴力で学長に居座った》の格好になる。

    そこで,「覇者」について考えることになる。

      覇者は,民衆の軽蔑・反感・憤りの対象になる。
      覇者自身も,自分に対する民衆の軽蔑・反感・憤りを十分認識している。
      そして覇者は,「権力維持の道は,この軽蔑・反感・憤りを力で凌駕することである」の考えに進む。

      「軽蔑・反感・憤りを力で凌駕」の方法は,民衆をトップダウンに悉く従わせることである。 「君主には従うしかない」の意識を徹底して植え付け,性格を卑屈にしていくのである。
      この方法は成功する。 なぜなら,民衆は<覇者>を軽蔑・反感・憤りの対象にはするが,同時に<自分たちの生殺与奪を意のままにする者>にして,これを恐れの対象にするからである。


    「学長の居座り」で注意しなければならないのは,ここには──組織 (公器) の私物化はあっても──悪意は存在していないということである。 「悪意が存在していない」という意味では,悪者は存在していない。

    このことを強調するのは,独裁政権は悪者論で語られることが多いからである。
    独裁政権を悪者論で語るのは,間違いである。
    北朝鮮の金王朝にしても,先般崩壊したエジプトのムバラク王朝にしても,無惨な出来事で満ちあふれていても,悪人はいない。 ヤクザ・マフィアの映画に悪人がいないのと同じである。
    王朝体制の成立の構造・力学の要素は,<自分を是(ぜ)とする>と<一家おもい>である。
    <一家おもい>の内容は,<生計>である。

    悪者を挙げるとすれば,人をして覇権に進ませてしまう制度である。
    「法人化」の国立大学の学長制度は,構造的に,これになる。
    辞めてタダモノになるのが嫌ならば,居座るのみである。
    そして,法がこの居座りを保証している。