Up | 無算で起ち上げ,人間関係でやめられず | 作成: 2007-10-30 更新: 2007-10-30 |
官は,自分が経営する機関の「改革」を課題にもつと,「民間」のスローガンをつくり出す。 「民間的手法」「民間活力」を唱えるわけだ。 1980年代後半以降,「民活 (民間活力の活用)」バブルが起こる。 地域振興の課題をもった官が,政策的に第三セクター会社を各地に設立した。 第三セクターをやれば,地域活性化・雇用機会創出が実現されるというわけだ。 この第三セクター事業の象徴的なものが,「テーマパーク」。 このときの「第三セクター」の意義は,お手軽さである。 <ノリ>で起ち上げることができてしまう。 「国・地方公機関と民間が共同出資・経営する企業」が「第三セクター」の意味だが,その「出資・経営」は借金の上に立つ。 資金は,金融機関の方から借入をもちかけてくる。──そんな時代であった。 官民共同は,「主体不明=相互もたれ合い」の形になって現れる。 「何とかなるんだろう」「(自分ではないが他の)だれかが何とかするんだろう」の感覚が支配する。「親方日の丸」の感覚が漠然とあって,「借金」「資金繰り」の感覚がまったく希薄であるか,あるいはその感覚をまったく持たない者たちが,経営・運営担当する。 こうして,「余裕のない」というよりは「採算度外視」の経営・資金繰りが,続けられる。 そしてある日,「借金とは返済しなければならない金のことである」が突きつけられたところで,破産する。 言い訳のことばは:
以上は,「法人化」の国立大学にとって,よい教科書になるはずであった: しかし,教科書にはならなかった。 国も,「民間」のスローガンを発することに関しては,金輪際懲りることがない。 「有識者会議」を使って国立大学に「民間的手法」をあれこれ示し,
おかしいよ」 国立大学も,せっせと横並びに努める。 国立大学が一斉横並びで『中期目標・中期計画』に書き入れたものに一つに,「サテライト教室」がある。 「サテライト教室」は,「法人化」バブルにのせられてつくられた。「『中期目標・中期計画』での体裁づくり」という動機不純でつくられた。 ──実際,「見込み」についての計算は,「少算」どころではなく「無算」である。 今月 (2007-10),北海道教育大学のサテライト教室志願者数が示された:
これは,「第三セクター」バブル期に発生の「テーマパーク」を思い起こさせる。 「テーマパーク」は,「借金」がマジであることを示されて,倒産した。 その前に軌道変更されなかったのは,「何とかなるんだろう」「(自分ではないが他の)だれかが何とかするんだろう」の感覚が支配していたからである。 そして,軌道変更は人間関係的につぎの理由で憚られる: 組織の人間にとって,事業行為の合理性と組織内の人間関係とどちらが重いかというと,圧倒的に人間関係が重い。事業行為の合理性1に対し,人間関係 99 である。 現在,厚生省は,「薬害肝炎の症例リストを持っていながら本人に告知しなかったばかりでなく,このことを隠蔽していた」ことで,その非道が非難されている。 しかし非難する者も,同時につぎのことを承知・容認している:
「組織の人間関係」の方が圧倒的に重い。 |