Up 「有識者会議」の意味 (機能・目的) 作成: 2009-09-09
更新: 2009-09-09


    一昨日 (2009-09-07),「倫理・人権教育のあり方に関する有識者会議」(北海道教育大学) の初会合があった。 たまたまTVの道内ニュースで視たので,昨日ネット検索で新聞報道をあたってみたところ,毎日新聞の地方版に載ったものが検索された。つぎの内容である:

      毎日新聞 2009年9月8日 /北海道
    道教育大の不祥事:有識者会議、セクハラ被害相談の体制充実など検討

     「学生、教員による不祥事が相次いだことを受け、道教育大の「倫理・人権教育のあり方に関する有識者会議」(座長=山田家正・元小樽商大学長)の初会合が7日、札幌市中央区であった。(1)学生による強制わいせつ事件などの検証(2)セクハラ被害などの相談体制の充実(3)法令や規範を守る教育システムのあり方――などを検討し、今年度末に再発防止策をまとめる。
     同大では、2月に旭川校の准教授3人がアカデミックハラスメント(上下関係を利用した学内での嫌がらせ行為)で免職。3月には札幌校の学生4人が女子高生へのわいせつ行為で逮捕された。

    「学生犯罪」「教育のセクハラ・アカハラ」というテーマで,なぜ「有識者会議」なのか? 教員養成系大学であれば,この専門性は自分の守備領域の中にある。
    要点は,「有識者会議」というものの機能・目的である。

    「有識者会議」は,ショー (show) である。
    外に見せる (show) ものとして,企画される。
    外に見せたいものがあり,それをその通りに見せるものとして「有識者会議」を立てる。

    この意味から,教員会議は「有識者会議」にならない。
    教員の専門性がいかに高くとも,それは「有識者」とは無関係である。
    教員の専門者会議は,問題を根底的に論じるようになる。
    大学トップにも飛び火することになる。


    「有識者会議」は,戦略アイテムである。
    自分を合理的な者・確かな者として外に見せるために,「有識者会議」をつくる。
    政策を合理化すること,自分の努力を外に見せることが,目的である。
    そして「報告書」が,「有識者会議」という企画の成果である。

    「有識者会議」の「報告書」は,報告書以上のものである。──このことに注意しなければならない。
    この「以上」を説明するには,「言語レベル」の概念を使うと便利である。 すなわち,「報告書」の言語は,シンボルとしての言語ということになる。
    シンボルとしての言語とは何かというと,念仏の唱名が端的な例。 それ自体がありがたいのである。


    さて,法人化の国立大学は,「有識者会議」を戦略アイテムに用いるところとなる。
    なぜか?
    要点は,「法人化」の第一義であるところの「学長の強力なリーダシップ」である。

    「法人化」の大学トップは,この第一義に忠実に,ボトムアップを退けることをやってきた。 この結果,ボトムアップが必要なときにボトムアップを求めることができないカラダに自らしてしまった。
    ボトムアップの要点は,大衆の自発的合意形成である。
    これを退けたために,大衆の合意は強制のものになる。
    しかし「強制」は通用しないので,「権威を示し,大衆にこれを頂かせる」を方法にする。
    「有識者会議」は,このようなものの一つである。

    しかし,国立大学の場合,「有識者会議」はこの意味の戦略アイテムにはならない。
    大学教員というものが,それぞれ一家言を持っていて,権威を示されれ ばそれを頂くような大衆には,なかなかなってくれないからだ。