Up 中央指導と有識者会議 作成: 2006-09-17
更新: 2006-09-17


    国立大学行政は,「中央指導」の形になっている。 そしてこの構造が,様々に問題になってくる。

    国立大学の運営に係わる方法について,それの是非 (長所・短所,トレードオフ) をいちばんよく知るものは,現場である。 一方,文科省は,国立大学に「国立大学の運営方法」を指導する立場を自負している。

    文科省は,国立大学の運営方法を提言させるための各種審議会を組織し,審議会答申を立法化する。
    審議会は,「有識者会議」(その時代の「有識者」の会議) である。 例えば,最も影響力の大きな審議会である中央教育審議会 (中教審) のメンバー構成は,つぎのようになっている:

    近頃は特に「有識者会議」が流行しているが,どうもつぎのことが一般にはよく知られていないようだ:

        「有識者会議」は「中央指導」の常套である。

    「有識者」は「前衛主義」に通じ,共産主義国家を典型とする「中央指導」と相性がよい。


    実際,「有識者会議─中央指導」は非常事態において認められ得るものであり,恒常化されてはならないものである。 しかし,施政者はこの形を都合のよいものと思い,恒常化する。 (長期的には破壊の芽を育てていることになるのだが,視野狭窄してこのことがわからない。) そして,国民も,そのようなものかと思ってしまう。

    前衛主義/中央指導を斥ける立場が,デモクラシーである。──デモクラシーでは,「有識者」ではなく「代表/代議員」になる。
    前衛主義とデモクラシーは,つねにせめぎ合う。 このせめぎ合いの関係を,ここで簡単に押さえておこう:

    1. デモクラシーの功罪の罪は,「エゴが通って全体の利益が損なわれる」が起こること。(既得権益者が抵抗して,改革を起こせない/改革が進まない。)
    2. この状況に際して,悪者論体質の正義漢は,選良主義/前衛主義に進む。政治においては,中央指導/独裁政治に進む。この前衛主義/中央指導は,独善であり,全体の知に基づいていないので,意図とは裏腹に破壊に進む。(改革断行の立場から,確信犯的にこのプロセスがとられる場合もある。)
    3. 破壊の反省から,デモクラシーに返る。
    4. 過去の忘却により,同じ運動の繰り返し。


    ここまでのまとめ:
      国立大学に対する施策において,文科省は前衛主義/中央指導の立場をとっている。
      裏返せば,現場に対する不信感 (愚民思想) がある。