Up | <学校数学の数学>瞥見──「数」を例に | 作成: 2009-12-18 更新: 2009-12-18 |
この「精選と構成」は,実際にどのようなものになるか? 「数」を例に,これを瞥見しておこう。 言うまでもなく,学校数学の最も主要な主題であって,小学校から高校までの数学に通底してあるのが,「数」である。 「数」の道具性は,「量」の計算である。 量計算ができる前処理として,量の表現がある。 量の表現は,「もとにする量のどれだけ」で表し,「どれだけ」の表現を用いる。 「どれだけ」は「比」ということになり,この「比」の表現としてつくられるのが「数」である。 これが「数」の道具性である。 「数」のこの道具性 (「数」の意味) をとらえる視座を与えるものは,専門数学である。 それはどのような数学か? 一般に,概念は内包(意味・構造) と外延(事例) で理解される。 この両方が整っていないと,概念の理解には至らない。 「数」の道具性の内包(意味・構造) をとらえる視座を与える数学は,「代数的構造」および「線型代数」である。 また,外延(事例) をとらえる視座を与える数学は,「次元の拡張」や「数の構築・拡張」である。
「数の構築・拡張」は,ペアノの公理から出発して,同値類の方法を用いて,数を拡張していく。 ここでは,「集合と論理」がベースになる。 「数」の外延(事例) は,複素数のさらに先の四元数くらいまで行く必要がある。 四元数くらいまで行ってはじめて,「数」の各系 (自然数,分数,正負の数,複素数,四元数) の特殊性,その特殊の程度,そして「数」の意味が,見えるようになるからである。 以上は,数の一般論・構築論である。 そしてこれの一方で,数の系の各論が主題になる。 「個数」の表現に使う「自然数」の本質は,「系列」である。 そしてつぎに,この「系列」を個数計算の道具に使えるようにする。 これらの主題をとらえる視座を与える数学は,「ペアノの公理・自然数論」である。 学校数学の「整数」では,倍数・約数・素数・素因数分解が主題になる。 これらの主題をとらえる視座を与える数学は,「環・イデアル」である。 「実数」の場合はどうか? 「実数」を理解する視座を与える数学は?と考えるとき,必要な専門数学の分野がまた一挙に拡がることになる。 その数学は,「解析学」と「位相幾何学」である。 「数」を素材にして,「量」の普遍対象が構築される。 「普遍対象」の主題は,「集合と論理」の内容になる。 また,「量」の普遍対象としての「数」の論は,「数空間」の論になる。 「数空間」の論では,「位相幾何学」や「解析学」がベースになる。 また「複素数空間」の論は,それ自身で「複素空間論」の分野をつくっている。 ここに登場した専門数学は,すべて<学校数学の数学>の中に組み込まねばならないものである。 組み込むとは,構成的にやるということである。 現状はどうか? 各教員そして各科目が個々別々に立っているという状態である。 そして,一人の教員そして一つの科目においても,<学校数学の数学>が考えられていない。 |