Up 要 旨 作成: 2011-07-15
更新: 2011-07-15


    大学経営者は,財政に苦心する。 「形振り構ってはいられない」「毒でもなんでも食うぞ」の考え方になる。 そして「形振り構わず」「毒を食う」を実際にやるようになる。
    任期制の導入は,このようなものの一つである。

    任期制の導入では,教職員の承認を得るというステップを踏まねばならない。
    学長は制度上独裁をやれるのであるが,制度上独裁がやれることとその独裁がうまくいくことは別である。 そして,任期制の導入は,独裁ではうまくいかないことに類する。

    教職員の承認を得るために経営者が行うことは,「教育・研究のためになる」という言い方で任期制を合理化することである。 すなわち,「大学の教育・研究は任期制の導入によってよくなる」という論をつくって示す。

    「任期制の導入によって大学の教育・研究はさらによくなる」は,経営陣にしても信じるものではない。 ここが要点である。

    そこで,任期制導入の提案に対して教職員が異論をつくろうとする場合,「任期制の導入によって大学の教育・研究はさらによくなる」は間違いだを実直に論ずるのは,的を外す格好になる。 間違いだは,相手も承知のことだからである。 相手は,故意にウソを並べている。
    あり得る異論の形は,「その形振り構わずは,本当に身の破滅になるぞ」である。


    玄海町の原発再稼働問題の報道で,その地で旅館を営んでいる人の心境が伝えられることがあった。 いわく,原発労働者の宿泊が無くなり生計に困っている,原発を再稼働して欲しい。
    第三者的にこれを聞く者は「おいおい,そのことと原発事故の広域破壊性・制御不能性の問題が天秤にかかるってか」となってしまうわけであるが,個人・企業・法人というものは,自分のいまの急場をしのぐこと (そのやり方によって全体がどうなろうと) をいちばんの大事にすることになるのである。

    「形振り構ってはいられない」「毒でもなんでも食うぞ」の大学経営者では,いまの急場をしのぐこと (そのやり方によって全体がどうなろうと) がいちばんの大事になっている。
    彼らは,毒の意味については思考停止する。 思考すれば,毒を食えないからである。
    彼らには,「おいおい,急場しのぎを身の本当の破滅と天秤にかけるってか」を意見していくことになる。