Up 秘密主義 作成: 2006-05-04
更新: 2006-05-04


    「中央指導」の枢要は,
「中央抜き・中抜き」をされないために,
組織を横断する直接制を発生させない
    ことである。
    「組織を横断する直接制」を抑圧する口実としては,「組織の秩序」が用いられる。
    「中央指導」に馴らされた組織では,「組織の秩序」の題目だけでも十分機能する。 組織員はこの題目に自ら拠って,組織横断的な言論を自己抑制する。

    この自己抑制は,習い性になり,体質になる。体質になったときは,同時に「お上意識」が形成されている。「個人が主体」の原則に戻れないカラダ・アタマになってしまっている。


    「組織の秩序」は,言論の組織横断を許さないことであるから,秘密主義になる。 ──実際,情報の流れは直接の上下間のみに許され,横断は許されないので,「隣のことはわからない」「隣には知らせない」「隣のことはお互いわからない方がよい」の状態になる。
    これは,共産主義国家の支配統制組織とか諜報組織に特徴的に見られるものだ。


    秘密主義を実現するためには,「組織の秩序」の題目だけでは弱い。 実際,秘密主義を実現するための手法がある。

    この手法は,つぎのようになる:

    1. 相手の失敗・弱みをつかみ,
    2. 「ここだけの話にしよう」にして,
    3. 庇護関係をつくる。

    組織の中ではだれでも失敗をおかす。したがってこの手法は,「失敗を弱みと考え,それの隠蔽に腐心する」精神風土では簡単に効く。

      「失敗学」の意味には,「学ぶとすれば,それは失敗から」の他に,「秘密主義・隠蔽主義を退け,中央支配統制が生まれる芽を潰す」という意味がある。

    また,「相手の失敗・弱みをつかむ」がうまく行かないときは,「プライバシーの守秘」といった「情報守秘」を要素に混ぜ込む:

    1. 相手の失敗・弱みをつかみ,
    2. 情報守秘も混ぜ込み,
    3. 「ここだけの話にしよう」にして,
    4. 秘密共有の内密関係をつくる。


    秘密主義の先にあるものを警戒し秘密主義を退けるには,先ず個々が,この手法を忌むべきものとする意識を持たねばならない。 そして,「個人の失敗は皆に起こり得る」を互いに認めることが必要である。

    そこで,自分の問題を互いに知らせ合うこと (問題共有) が,組織員の<義務>になる。 ──この義務を怠るとき,その先には中央支配統制がある。

    中央支配統制は,中央指導に志向性のある者(個の多様性により,これはつねに一定割合で存在する) だけではつくられない。彼らに対する<寛容>から始まり, <諦め>,<忍従>,<慣れ>に至る者が多数派になることで,つくられる。