http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/09/05092701/002.htm

国立大学法人・大学共同利用機関法人の
平成16年度に係る業務の実績に関する評価結果の概要


  1. 評価方法、評価の審議経過等

    (1) 評価制度
     国立大学法人法により、国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下、「国立大学法人等」という。)の各事業年度における業務の実績について、「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の各年度終了時の評価に係る実施要領(平成16年10月国立大学法人評価委員会決定)」に基づき、国立大学法人評価委員会が評価を行う。
     業務運営・財務内容等の経営面を中心に、中期計画の進行状況を調査・分析し、業務の実績全体について総合的に評価を行う。
     なお、教育研究の状況については、その特性に配慮し、中期目標期間終了時の評価において、国立大学法人評価委員会が、独立行政法人大学評価・学位授与機構に対し評価の実施を要請し、当該評価の結果を尊重して行うこととしている。

    (2) 評価方法
     各法人から提出された実績報告書等を調査・分析するとともに、学長・機構長等からのヒアリング、財務諸表や役職員の給与水準等の分析も踏まえながら評価を実施した。

    [1]  全体評価
     年度計画の進行状況全体について、記述式により評価を行う。
    [2]  項目別評価
     「業務運営の改善・効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営」の4項目については、以下の5種類により進行状況を示す。なお、これらの水準は、基本的には各国立大学法人等の設定した計画に対するものであり、相対比較する趣旨ではないことに留意する必要がある。
     「特筆すべき進行状況にある」、「計画通り進んでいる」
     「おおむね計画通り進んでいる」、「やや遅れている」
     「重大な改善事項がある」

     「教育研究等の質の向上」については、事業の外形的・客観的な進行状況を確認し、特筆すべき点や遅れている点を指摘する。

    (3) 評価体制
     国立大学法人評価委員会(委員長:野依 良治 独立行政法人理化学研究所理事長)の国立大学法人分科会、大学共同利用機関法人分科会の下に、評価チームを設置して調査、分析を行った。

    (4) 審議経過
    ・6月末   各法人から実績報告書、財務諸表等の提出
    ・7月14日〜27日   各法人から業務の実績についてヒアリング
    ・8月   各評価チームにおける評価案の検討
    ・8月30日   国立大学法人分科会において評価案の審議
    (意見申立ての機会:9月1日〜7日)
    ・9月2日   大学共同利用機関法人分科会において評価案の審議
    (意見申立ての機会:9月6日〜9日)
    ・9月16日   国立大学法人評価委員会総会において審議・決定

     この他、評価委員による法人訪問を試行的に実施した(5国立大学法人及び4大学共同利用機関法人)。

  2. 評価結果の概要

     全体の状況

     全般的に、法人化を契機として、あるいは法人化のメリットを活かして改革に積極的に取り組んでおり、中期計画は順調に実施されているものと評価できる。しかし、法人としての運営・経営の確立という面で見れば平成16年度は準備・検討段階に留まっている法人もあり、次年度以降の進展が期待される。

     業務運営・財務内容等については、「業務運営の改善・効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理等)」の4項目について、年度計画の進行状況等について評価を行った。
     その結果、特に「財務内容の改善」については、各法人ともに外部資金獲得や経費節減等に積極的に取り組んでおり、順調に計画が実施されているものと判断される。
     また、「業務運営の改善・効率化」については、ほぼ計画は順調に実施されているものの、人事管理、事務の合理化・簡素化等の点で更に改善の余地があり、一部の法人については計画の進行状況がやや遅れていると判断される。一方、特筆すべき進行状況にある法人もあった。
     「自己点検・評価及び情報提供」及び「その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理等)」については、ほとんどの法人がほぼ順調に計画が実施されているものと判断される。

     一方、特に業務運営に関し、大学院修士課程又は博士課程において、学生収容定員の充足率が85パーセントを満たしていない国立大学が11大学あり、今後、速やかな定員の充足や入学定員の適正化に努めることが求められ、この点について法人に注意を促す必要がある。

     「教育研究の質の向上」の項目については、多くの大学で教育改革を重点に置き、教育機能の強化を図っていることや、法人内の競争的環境の醸成を図りつつ、萌芽的研究の促進や若手教員の育成等に積極的な取り組みが見られることが注目される。

     3つの大学共同利用機関法人については、我が国全体の学術研究の発展を見据え、従来別々の組織であった異なる分野の複数の大学共同利用機関が、法人化とともに、統合するという2つの大きな変革が同時になされたが、初年度の限られた時間の中で、機構としての体制が遅滞なく整備されたことは評価できる。

     年度計画の設定状況については、法人化初年度ということもあり、平成17年度以降の検討・実施とする事項が多い法人や、施策の検討にとどまるなど設定内容が消極的な法人もあった。各法人においては、教育研究の一層の質の向上を図るという観点から、適切な計画を設定し、積極的に対応していくことが求められる。

     年度計画の進行状況等にかかる法人の自己点検・評価については、実績を詳細に分析し、厳格に評価を行った法人もあり、そのような取り組みは次年度以降の改善・充実に資するものであり、高く評価できる。

     項目別評価の概況

    (1) 業務運営の改善・効率化
     この項目については、[1] 運営体制の改善、[2] 教育研究組織の見直し、[3] 人事の適正化、[4] 事務等の効率化・合理化等、業務運営の改善・効率化に関する各法人の年度計画の実施状況等について、総合的に評価を実施した。

     ほとんどの法人で、学長・機構長がリーダーシップを発揮するための体制の整備や、学長・機構長裁量の経費や人員枠の確保等が図られている。体制や仕組みの整備は行われたが、これらをいかに効果的に機能させるかが今後の課題である。
     また、人事事務・会計事務等の合理化・簡素化については、更に改善の余地があり、まずは法人内の体系的な規程の整備を含め、一層の推進を図る必要がある。さらに、経営協議会や監査の実質化についても一層の努力が求められる。

     各法人において、新たな社会的ニーズや教育研究の進展に対応するため、既存の組織の改組・転換を図りながら、積極的に新しい組織の検討・整備が進められている。例えば、学部学科制から学群学類制による柔軟な組織への移行や、学長・機構長直属の分野横断的な研究組織の設置等の例がある。
     また、一定の教育研究組織の設置に時限を付して、評価により見直すことを制度化している法人もある。一方、法人化前に時限を付して設置していた施設について一律に時限を解除している例もあり、法人の自主的な努力が求められる。

     非公務員化のメリットを活用し、例えば、年俸制の導入、裁量労働制の導入、兼職・兼業の許可基準の弾力化等、多くの法人で柔軟な人事システムが導入されている。なお、柔軟な新たな人事システムの導入に際しては、あわせて人事事務の軽減にも努力することが求められる。

     新たな人事考課制度、個人評価システムの導入が中期計画に掲げられ、検討が行われているが、実施については今後の課題とされている法人が多い。しかし、平成16年度から、教員及び事務職員の新たな個人評価制度を実施し、処遇に反映させている例もあった。

    【評定の結果】
    「特筆すべき進行状況にある」  7法人(8パーセント)
    「計画通り進んでいる」  37法人(40パーセント)
    「おおむね計画通り進んでいる」  39法人(42パーセント)
    「やや遅れている」  10法人(11パーセント)
    「重大な改善事項がある」  0法人(0パーセント)

    (2) 財務内容の改善
     この項目については、[1]外部資金の導入その他自己収入の増加、[2]経費の抑制、[3]資産の運用管理の改善等、財務内容の改善に関する各法人の年度計画の実施状況等について、総合的に評価を実施した。

     財務内容の改善については、特に経費の節減には各法人とも積極的に取り組んでおり、評価できる。また、競争的研究資金、共同研究等の外部資金の獲得についても、法人内でインセンティブを高める方策を講じること等により、一定の成果を上げている。この他、各法人ともに附属病院の増収、経費節減には積極的に取り組み、成果を上げている。

     健全な財務運営のための定員、人件費管理については、多くの法人で取り組みが行われているが、中期的な見通しを踏まえた計画の策定については必ずしも十分ではない。また、中期的な具体の財政計画の策定については、多くの法人で不十分な状況がみられ、この方面での改善が必要である。資金管理と経理等については、多くの法人で法人化以前の方式をそのまま踏襲しているが、法人の規模、分野、学部構成に応じたシステムの導入が求められる。なお、財務内容を適切に把握するにあたって、学部、学科、研究所毎に発生するコストを把握し、分析を行うなど、管理会計的な観点から財務内容の分析を行うための基盤の整備が期待される。

     その他、法人会計システムの改善について
     退職一時金に関し、運営費交付金以外の財源により雇用している職員については、適正な水準の引当金を計上する必要がある。
     予算執行に関し、年度途中にその進捗状況を把握して、その分析の下に適切な管理を行い、必要な措置を講じるなど、より効果的に実施されるよう、改善が期待される。

    【評定の結果】
    「特筆すべき進行状況にある」  3法人(3パーセント)
    「計画通り進んでいる」  50法人(54パーセント)
    「おおむね計画通り進んでいる」  40法人(43パーセント)
    「やや遅れている」  0法人(0パーセント)
    「重大な改善事項がある」  0法人(0パーセント)

    (3) 自己点検・評価及び情報提供
     この項目については、[1]評価の充実、[2]情報公開の推進等に関する各法人の年度計画の実施状況等について、総合的に評価を実施した。

     自己点検・評価については、法人全体としての充実した評価の実施に向けて、体制の整備あるいは方針の検討が進められている。今後、速やかに「企画─実行─評価」の改革サイクルを確立することが求められる。一方、年度計画の進捗状況を定期的にチェックするシステムを構築したり、独自のデーターベースを整備している法人や外部評価に積極的に取り組んでいる法人もあった。

     広報については、マスコミや地元企業・地域との連携強化、県内すべての高校訪問、学生の意見を取り入れた広報活動等、法人化を契機として積極的な取り組みが見られる。

    【評定の結果】
    「特筆すべき進行状況にある」  4法人(4パーセント)
    「計画通り進んでいる」  51法人(55パーセント)
    「おおむね計画通り進んでいる」  35法人(38パーセント)
    「やや遅れている」  3法人(3パーセント)
    「重大な改善事項がある」  0法人(0パーセント)

    (4) その他業務運営
     この項目については、[1] 施設設備の整備・活用、[2] 安全管理等、その他の業務運営に関する各法人の年度計画の実施状況等について、総合的に評価を実施した。

     施設設備に関しては、ほとんどの法人で法人としての施設マネジメントの推進体制、関連規程が整備されている。また、多くの法人で施設の有効活用を促進する方策が取られている(共用スペースの確保、施設の一元的管理、スペースチャージの徴収等)。

     安全管理面では、パソコン等で薬品を管理する一元管理体制や、民間コンサルタント等の外部評価を積極的に実施している法人もあった。一方、安全管理マニュアル等について検討中の法人もあり、早期の実施が求められる。

    【評定の結果】
    「特筆すべき進行状況にある」  1法人(1パーセント)
    「計画通り進んでいる」  52法人(56パーセント)
    「おおむね計画通り進んでいる」  37法人(40パーセント)
    「やや遅れている」  3法人(3パーセント)
    「重大な改善事項がある」  0法人(0パーセント)

    (5) 教育研究等の質の向上
     この項目については、教育研究の質の向上に関し、各法人の年度計画に記載された事業の客観的・外形的な状況を確認し、特筆すべき、あるいは遅れている点を指摘した。

     教育活動については、多くの大学で教育改革を重点に置き、教育機能の強化を図っている。例えば、学生による授業評価やファカルティ・ディベロップメントによる指導方法の改善、大学のOB等の活用、ボランティア活動の単位化等、教育方法の多様化等が進められている。また、少人数教育、クラス担任制等の学習指導の充実や、インターンシップの推進、企業説明会の開催等の就職支援体制の充実が図られている。

     研究活動については、法人内公募制度や学長・機構長裁量経費の活用等により、法人内の競争的環境の醸成を図りつつ、萌芽的研究の促進、新しい融合分野創出を目指した組織の枠を超えた取り組みや若手教員・女性教員の育成等に積極的な取り組みが見られる。また、地元企業との組織的な協定の締結等、地域社会への貢献、産学連携の推進が積極的に図られている。