Up 「広報」における開示と宣伝の関係 作成: 2006-04-03
更新: 2006-04-03


    今月1日から,「国立大学法人北海道教育大学ホームページ管理運用に関する要項」が施行となった。 この中に,つぎの文言がある:

       (掲載禁止事項)
      第4  本学のホームページには,次に掲げる情報を掲載してはならない。
      ‥‥
      (8) その他本学の広報活動を推進する上で不適切と認められるもの  
       (リンク)
      第5 各校のホームページに講座,研究室等のページをリンクする場合は,当該ぺ一ジの責任者を明確にした上で,各校の責任において行うものとし,情報掲載においては,第4各号を遵守するとともに,適切かつ正確な情報を提供するものとする。  
       (情報の修正等)
      第6 広報企画室室長は,第4各号のいずれかに該当する場合又は大学の広報として不適切なページと判断した場合は,当該ページの責任者に対し,情報の修正又は削除を求めることができる。

    この要項の運用では,「大学の広報」が重要な論点になると思われるので,ここしばらく,これについて少し深く考究してみようと思う。


    「広報」には,「開示」と「宣伝」の2つの意味が重なっている。
    「開示」は,等身大の自分を示すことに重点を置く。 等身大の自分を示して,
      「こんなわたしですが,もし気に入ってもらえるなら,よろしく。」
    と,相手に問う。
    等身大の自分を示すわけなので,「リスク開示」も重要な要素になる。
    いわば,長短含めてスペック (仕様) をありのままに示すわけだ。


    今日,大衆が賢明になり,長短あわせて物事を見たり考えたりするようになったことで,「リスク開示」はむしろ企業の「誠実」さを表すものとして,好意的に受け取られるようになった。( リスク開示 (2006-02-03))
    翻って,バラ色の「宣伝」は,今日では信用されない。うさんくさく受け取られるだけだ。 そんな調子のいいわけはないと,みなが知っているからだ。
    そして不都合なことの隠蔽などしようものなら,即,企業の息を止められる。


    「開示・宣伝」を目的にする大学ホームページでは,およそ3つの機能を考えることになる。
    一つは,相手の目をこちらに向かせること。この目的のために,キャッチーなデザインを考える。 北海道教育大学のホームページでは,広告会社にこれをアウトソーシングしている。
    相手の目をこちらに向かせることをしたら,つぎに大学に関するルーティンな情報を相手の閲覧に供する。 ページ構成,レイアウトの機能性がデザインの課題になるので,ここでも広告会社に負うところが大きい。
    そして最後に,等身大の自分を相手に示す段になる。
    これは,広告会社にはできない。 等身大の自分を示すのは,現場の役目だ。


    「要項」の施行では,定めし「広報」に対する捉えが問題になる。
    「要項」では,広報企画室,総務部総務課がコンテンツを管理/統制するように読めるが,この広報企画室,総務部総務課がつぎのような旧来型企業意識を引き摺っている場合には,たいへんなことになる:
大学執行部に都合の悪い
ことの開示
 =  本学の広報活動を推進
する上で不適切
本学の広報活動を推進
する上で適切
 =  大学執行部に都合の悪い
ことの隠蔽
    実際,この「要項」にもし施行規則を付けようとすれば,それは「オンブズマン」に類するようなたいそうな制度の導入になってしまうだろう。

    したがって,「要項」が施行されたこのはやい段階から,大学に相応しい良質な「広報」の研究・論考を速やかに開始する必要がある。