Up 制度指向は, 論理倒錯・本末転倒 作成: 2009-09-11
更新: 2009-09-11


    制度指向は,論理の倒錯であり本末転倒である。
    制度指向の者は, 論理倒錯・本末転倒がわからずにいる者である。

    例として,小泉郵政民営化を取り上げる。
    これは「行政改革の本丸」と位置づけられた。
    どんな考え方をするとこのようになるのかというと,つぎのようにである:

      行政は,利益誘導型行政である。
      政治家や官僚は,<利益を誘導してやる>という方法で,ひとを支配する (自分のいいなりにする)。
      利益を誘導してやる方法は,公共事業である。
      公共事業をやらせるには,支払う金をどこからかもってこなければならない。
      これに使われてきたのが,郵貯・簡保で国民から預かっている金である。
      そこで,このやり方をできなくすれば,利益誘導型行政もオシマイになる。
      ということで,郵貯・簡保で国民から預かっている金を,政治家や官僚が使えないようにしよう。
      さて,それにはどうしたらよいか?
      郵貯・簡保を民営化したらよい。
      民間企業になれば,資金は合理的に運用されるようになる。
      公共事業という野方図で採算度外視の金の使い方は起こらない。
      こういうわけで,郵政民営化が行政改革の本丸である。

    こうして,「官から民へ」の制度変更に突入していくのであった。

    この結果は,どうであったか?
    振り子が戻っているのがいまの状況であり,これが答えである。


    「政治家・官僚が郵貯・簡保で国民から預かっている金を使って利益誘導型行政をやり,ひとを支配する」が正される形は,「政治家・官僚が,国民から預かっている金を使って利益誘導型行政をやるようなことを自発的にしなくなる」であり,これのみである。 「国民から預かっている金を彼らの手に届かないところに置く」ではない。
    実際,われわれは,「泥棒をさせないために,盗まれないところに物を置こう!」というムーブメントはやらない。 これが論理倒錯であり本末転倒であることくらいは,わかる。

    小泉郵政民営化は,これと同型の論理倒錯・本末転倒である。
    「国民から預かっている金を彼らの手に届かないところに置く」その場所は,市場原理主義の貫徹を旨とする「民」である。 「国民から預かっている金を彼らの手に届かないところに置く」をやるために,市場原理主義を正義にする。(<市場原理主義=正義>の伝道者/イデオローグの役を請け負ったのが,竹中平蔵。)


    しかし,ひとは上気すると,制度指向の論理倒錯・本末転倒がわからなくなる。
    「法人化」の国立大学は,いまもこれの真っ最中である。 日頃の研究修練は,何の役にも立たない。 体(てい)無く上気し,論理倒錯・本末転倒に嵌る。