Up フォトライブラリ 前文 作成: 2023-10-01
更新: 2023-10-01


フォトライブラリ

    撮影画像は,対象の矮小化になったり悠大化になったりする。
    雲の画像は,前者になる。
    大型ディスプレイで蟲のズーム画像を見るのは,後者になる。
    蟲の糞だって,タテ5mのパネルに大写しすれば,もうすっかりアートと化し,悠大で拝みたくなること必定である。

    この矮小化・悠大化が分かれるのは,どんな原理によるのか?
    それは,単純に「視直径」──視点と対象の両端がつくる角の大きさ──である。


    映画を DVD で見るのは,映画体験にならない。
    映画体験にならない理由は,視直径である。
    同じ理由から,映画を後方座席で観るのは損である。
    前方座席で観るべし。

    ダンゴムシに対しひとは<悠大>を受け取らないが,王蟲 (オーム) に対しては受け取る。
    理由は,再び視直径である。
    DVD の中の王蟲の視直径は小さいが,そのそばにナウシカがすごく小さい視直径で描かれている。
    あるいは,ナウシカに対する王蟲の視直径がすごく大きいとひとが受け取るように,作画が工夫されている。

    悠大な自然をバックにして人が立つ記念写真も,「視直径」の観点からは確かに意味がある。
    悠大な自然の画像は,これのコントラストになる<卑小>を含めないと,悠大に見えてこないのである。


    本物の精密なミニチュアを撮影した画像は,本物の画像と違わない。
    撮影画像とは,もともとこんなものである。
    撮影画像は,イマジネーションを以て本物を想う,というものなのである。

    写真は, 写真ではない。