陸上の氷が増えると,海面水位が下がる。
陸上の氷が減ると,海面水位が上がる。
さて,それはどれほど?
気象学が提示する数値を使って,これを計算してみよう。
註: |
北極海の氷のように海に浮いている氷は,融けても海面水位は変わらない。
これは中学理科の「浮力」の学習内容^^
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Hartmann (2016), §§1.7,1.8 に,つぎの記述がある:
- 地球の全水量は,1.35 × 109 km3
- その 97% が海
- 海は地表の 71% を覆い,その深さは平均で 3730 m.
- 陸上の氷 (氷帽・氷河) は,全水量の 2.2%
- 陸上の氷は,これの 89% が南極で,8.6% がグリーランド
ここで,つぎの問題を立てる:
「海面水位の1m(メートル) の変化は,
陸上の氷と海水の交換量が地球全水量の何%のときか?」
答えは,0.026 % :
97 x ( 1 / 3730 ) = 0.026
またこの交換量は,いまの陸上の氷の 1.2 %:
( 0.026 / 2.2 ) x 100 = 1.2
この数字は後で使うので,覚えておこう。
そこで,例えばいまの陸上の氷が全部 (100%) 融けて海に流れたときの海面水位上昇は,
より,
氷期には,海面水位が 100m以上も降下している。
これは,陸上の氷の量がいまの2倍以上になるということである。
「海に沈む国」キャンペーンのツバルの場合は,どういうことになるか?
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NHK News Web, 2021-11-10
南太平洋のツバル 外相がひざまで海につかり温暖化対策訴え
気候変動対策の国連の会議、「COP26」に合わせて南太平洋の島国、ツバルが動画を公開し、スーツ姿の外相がひざまで海水につかって海面上昇で水没が懸念される国の現状と気候変動への対策を訴えました。 ‥‥
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陸上の氷の 1.2%が融けると海面水位が1m上昇するのであった。
ツバルが1m沈むには,いまの陸上の氷の 1.2% が融けて海に流れなければならない。
ところで陸上の氷は,これの 89%が南極氷床。
南極についても「温暖化」を唱える声は喧しいが,南極氷床はほぼ圏外。
よって,「陸上の氷の 1.2%」は,<南極氷床以外の陸上の氷>で賄うことになる。
「陸上の氷の 1.2% 」は,<南極氷床以外の陸上の氷>の 10.9%:
1.2 / ( 100 - 89 ) = 10.9 (%)
「ツバルが1m沈む」ための「<南極氷床以外の陸上の氷>の10.9% が融ける」は,かなりきびしい条件である。
にもかかわらず「海に沈む国」キャンペーンは,1mどころではなく, 「数メートルの沈下」をひとに想わせようとしているわけである。
で,実際はどうなのか?
「人為的地球温暖化」キャンペーンの総本山である IPCC でさえも,IPCC (2021) では「この120年間に 25cm 程度上昇」のグラフを示す体である (p.354):
- 引用/参考文献
- Hartmann, D.L. (2016) : Global Physical Climatology (Sec. Ed.). Elsevier.
- IPCC AR6 WG1 (2021) : Climate Change 2021 ─ The Physical Science Basis
Chapter 2 (Changing State of the Climate System)
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