Up アンサンブル予報 作成: 2022-08-10
更新: 2022-08-10


    気象庁「アンサンブル予報」から引用:
       数値予報結果の誤差の原因は大きく2つに分けられ、ひとつは初期値に含まれる誤差が拡大すること、もうひとつは数値予報モデルが完全ではないことです。
     数値予報では、わずかに異なる2つの初期値から予報した2つの予報結果は、初めのうち互いによく似ていますが、その差は時間の経過とともに拡大します。これは、大気の運動にある特徴的な性質「初期値の小さな差が将来大きく増大する」というカオス(混沌)的な振る舞いのひとつです。実際の数値予報では、観測データの誤差や解析手法の限界から、初期値に含まれる誤差をゼロにすることはできず、時間とともに誤差が拡大することを避けることはできません。
     また、数値予報では、計算機の性能の限界により、ある大きさの格子を用いた近似式で気温や風等の予測計算を行います。このように近似式を使っていることからも、予報結果に誤差が生じます。
     このような誤差の拡大を事前に把握するため、「アンサンブル(集団)予報」という数値予報の手法を利用しています。この手法では、ある時刻に少しずつ異なる初期値を多数用意するなどして多数の予報を行い、平均やばらつきの程度といった統計的な情報を用いて気象現象の発生を確率的に捉えることが可能となります。


    『数値予報解説資料集』から引用:
       数値予報モデルでは、初期値が与えられれれば計算結果である予報値は一意に求まる。このためデータ同化によって得られた解析値を初期値として実行される数値予報を「決定論的予報」と呼ぶ。
    しかしどれだけ精度良く求めても初期値や境界値には誤差が含まれる。また数値予報モデル自体も、モデル化の際の近似や仮定、あるいは空間・時間の離散化のために予測には必ず誤差が生じる。
    数値予報では初期値に含まれる僅かな誤差が時間の経過とともに増大するが、この誤差の成長は大気の状態によって大きく左右され、同じ数値予報モデルを用いても、予測に含まれる誤差はその時々の大気の状態によって異なる。
    そのため、最も尤もらしい解析値のみを初期値として数値予報モデルを実行する決定論的予報では、予測の誤差(不確実性)を事前に知ることはできない。
     決定論的予報に対して、予測の誤差を見積もるために、初期値に僅かな揺らぎを与えて行う複数の予測を「アンサンブル予報」と呼ぶ。
    あるいは境界値や数値予報モデルを置き換え、これらの不確実性を考慮するアンサンブル予報もある。
    アンサンブル予報では、複数の予報値を利用することで予測の誤差を事前に見積もることができ、予測の信頼性に関する情報を得ることができる。