Up 日々の気温を大局的に理解する法 (要約) 作成: 2023-05-03
更新: 2023-05-03


    「地球温暖化」をキャンペーンするマスコミは,干涸らびた畑や雪の降らないスキー場を報道する。
    そのスキー場だが,そこに雪が降っていたのは 10〜50年くらい前のことである。
    この間の「平均気温」の差は,1度に満たない。
    この程度の気温差は,雪が降らなくなるという話にはならない。

    干涸らびた畑や雪の降らないスキー場は,「地球温暖化」ではなく「日照時間の増加」の話である。
    「日照時間の増加」は,「乾燥化」の話であり,「雲ができにくい」という話である。
    「雲ができにくい」は,「熱帯雨林」を想えばわかるように,気温の話ではない。

    さてその気温だが,これは日々変化する。
    しばしば,大きく変化する。
    この変化は,何がどうなっているのか。
    これを,ここで解説するとしよう。


    空気は流れている。
    それが「風」である。
    そこで,つぎのようになる:
      《気温は,風がこれを運んでいる》
    そしてこれより,
      《風の流線は,等気温線である》

    こうして,つぎの命題となる:
      日々の気温の違いは,通過する風がどこから流れてくるかの違いである
    ──寒いところから流れてくる風か,それとも暖かいところから流れてくる風か》


    「寒いところから流れてくる風か,それとも暖かいところから流れてくる風か」は,地上天気図からはわからない。
    風の流れは,地勢によって大きく攪乱されるからである。
    そこで,風の大局的な流れをとらえるために,高層天気図を用いる。

    高層天気図は,日本の「気温が日々変化するしくみ」を見ようとするときは,北極中心の北半球 500hPa 面天気図を用いることになる。
    以下「高層天気図」と言うときは,これを指す。


    地上天気図には等圧線 (等気圧線) が書かれている。
    「気圧」とは何か。
    空気粒子の密度──濃い・薄い──である。

    地上天気図と高層天気図の大きな違いは,「等圧線」に代わって「等高度線」になっていることである。
    500hPa 高層天気図だと,「この地点は,上空 ○m が 500hPa」を観測し,その高度が同じになる地点を線でつなげる。 これが「等高度線」である。
2023-04-03 09:00, 500hPa面天気図 (Wyoming Weather Web から引用・編集)
数値は,高度 (単位 m)

    この等高度線は,等圧線と同じ感覚で使える。
    即ち,高度の高低が気圧の高低と同値になる。


    高層天気図では,風の流線が等高度線に表されることになる。
    これは当然のことである。
    気圧は,空気の密度である。
    密度は,風がこれを運んでいる。
    よって,風の流線は,等圧線である。

    先に,《風の流線は,等気温線である》と言った。
    よって,つぎの3つは同じである:
      風の流線
      等高度線
      等気温線


    高層天気図では,極に向かうにつれて,気圧が低くなる。
    これはなぜか?

    空気の粒子には,地球の回転による遠心力がかかっている。
    この遠心力ベクトルの地表面成分は,低緯度側に向かう。
    何も抵抗がなければ,空気の粒子は赤道に集まることになる。
    しかし,粒子間の押し合いへし合いのダイナミクスにより,密度差を現す格好で均衡する。
    その密度は,極で最も小さく,赤道で最も大きい。
    「気圧」とは「空気の密度」のことであったから,つぎのようになる:
      《気圧は,高緯度になるほど低くなる》

    ところで,高緯度になるほど低くなるのは,気温もそうである。
    気温はなぜ高緯度になるほど低くなるのか?
    日射量が,高緯度になるほど少なくなるからである。

    よって,北半球高層天気図はつぎのようになる:
      《気圧の高低には,気温の高低が応じる》

    こうして,その等高度線からは,つぎの3つが同時に読めることになる:
      • 気圧 (空気の密度) の傾斜
      • 気温の傾斜
      • 風の流れ


    実際,北半球 500 hPa 面天気図は,つぎのようになる:
2023-04-03 09:00



    先に《気圧は,高緯度になるほど低くなる》と言った。
    そうすると等高度線は極中心の同心円模様になるはずだが,上図に見るように,実際はもっと複雑になっている。
    一方,この模様でも,気圧の傾斜と気温の傾斜は対応している

    この模様は何かというと,鉛直対流の上昇流渦柱と下降流渦柱の束を表している。

    上昇流があれば,下降流もなければならない。
    鉛直対流は,上昇流と下降流のセットになる。
    上昇流と下降流は,流れがスムーズになるように互いの位相を調整する。
    この結果が,《上昇流と下降流が互いに逆回転の渦柱になって隣合う──これの束》の配列 (「ベナール渦」) である:


    上昇流の渦柱は,上の2つの天気図では,局所的な<低気圧=低温>領域がこれになる。
    その渦は,上空から下に見て,左回転になっている。
    そして上昇流渦柱の間を,右回転の上昇流渦柱が埋めている。
    (右の天気図をクリックし,拡大図で風の流れを確認せよ。)

    上昇流渦柱が左回転で下降流渦柱が右回転なのは,なぜか。
    これは,複雑系の科学の謂う「創発 emergence」「進化の不可逆性」に類することであり,「地球の進化の過程でこうなった」と言うのみである。

    なぜ低気圧と低温が対応しているのか?
    上昇流は,上空に膨張する(てい)である。
    よって,密度が小さく,そして温度が下がる。
    下降流は,地面に対して圧縮される(てい)である。
    よって,密度が大きく,そして温度が上がる。

     註: 膨張する空気は温度が下がり,圧縮される空気は温度が上がる。


    そして,上昇流と下降流の渦回転に周りの空気が連動する。
    つぎのような風の流れになるわけである。
左回転の風と右回転の風を,それぞれ白と黒で表示


    そしてこの風の流れは,温帯の緯度だと前線を発生させることになる: