Up 同定は人のもたれ合い : 要旨 作成: 2015-07-11
更新: 2015-07-11


    草木の図鑑には,種の同定に関して「種Aと種Bの識別は難しい」のことばがよく出てくる。
    このことばに対しては,素朴に「識別が難しいなら,なぜ互いに異なる種として立てたのか?」の疑問がもたれる。

    原理として,個々の種の定義はできない。
    それは,個々の色の定義ができないのと同様である。

    「白」を定義すると,白として扱いたいものが白でなくなってしまう。
    白として扱いたくないものが白になってしまう。
    「白」を支えているのは,人のもたれ合いである。
    ( Wittgenstein の言い回しを用いれば,「言語ゲーム」。)

    種の同定は人のもたれ合いであるから,人 (社会・時代) が変わるにつれ変化する。
    即ち,つぎのことが起こる:
    • 種Aと種Bの識別の能力が失われ,同種として一括りにされる。
    • これまで同種として一括りにされていたものに対し区別の欲求が起こり,異種の区別が立てられる。
    特に,学会はこういうことをするところである。

    同定は,厳格で臨むものではない。
    同定は,達観してかかるものである。
    「達観してかかる」の形は,「テキトー」である。

    ただし,「テキトー」ができる能力は,「厳格」の修行のたまものである。
    「厳格」を捨てるために「厳格」を修行するというわけである。