Up 大日経 (摩訶毘盧遮那成仏神変加持経) 作成: 2018-05-31
更新: 2018-06-19


  • Mahā- vairocana- abhisaṃbodhi- vikurvita- adhiṣṭhāna- sūtra
      Mahā (摩訶) → 大
      vairocana (毘盧遮那(びるしゃな)) → 遍照 → 日
      abhisaṃbodhi → 現等覚 → 成仏
      vikurvita- adhiṣṭhāna → 神変加持(じんぺんかじ)
      sūtra → 経

    • 「ヴァイローチャナというのは、サンスクリット語では「輝かしいもの」という意味に由来する語です。
      もとはインドのバラモン教あるいはヒンドゥー教で、太陽に由来するものを意味することばでしたが、それを仏教がとり入れ、そしてありとあらゆる万物の究極の根底である仏の名としたものです。
      漢訳で大日如来といいます。」(中村元『密教経典・他』, p.125.)

  • インド中期密教の経典
    • 成立:7世紀前半から中葉にかけて
    • 胎蔵界曼荼羅を成立させる経典
    • 漢訳:善無畏(ぜんむい)三蔵 (訳),一行(いちぎょう) (記録)
    • サンスクリットの原典は,散逸

  • 現成論
    • 「真言密教はいろいろなものをすべて包容して、そしてそれをそれぞれの意義にしたがって生かしていくという、そういう面があります。‥‥
       どうしてそういう思想が現れたかということは、歴史的な背景をぬきにしては考えられません。‥‥西の方のローマとかアラビアなどとの交易も衰微したため、仏教の信者であった商人なども没落し、また西暦五OO年ごろに蛮族がインドに入ってきて、仏教教団などを荒らし、仏教教団はそこでひじような衰退を経験するわけです。一方、民衆のあいだには伝統的な信仰様式というものが根強くて、それはずっと残っていました。そういう情勢をふまえて新たな仏教の行き方を示したのが真言密教だったのです。そこでは民衆的なものを、そのまますべてとり入れていったわけです。
       ‥‥ 何でも生かされるわけですが,ただ、その生かされ方が従来の仏教とはちがっているのです。従来の諸仏、諸菩薩の場合には、その性格にしたがって生かされます。外道というものは、従来の仏教では排斥されましたが、真言密教から見れば外道というものはありません。それはそれなりに押さえられるべきもの、制せられるべきものとしての意味をもってくるわけです。そこの区別を失ってはいけないということも、同時に真言密教では説いています。」
        (中村元『密教経典・他』, pp.134,135.)

  • 構成

  • 三句の法門──因 (菩提心)・根 (大悲)・究竟 (方便)
    • 「菩提心爲因。悲爲根本。方便爲究竟」(「住心品第一」)
    • 「「菩提」というのは、ボーディ (bodhi) ということばの音を写したもので、さとりという意味です。
      さとりを求める心、すなわち「菩提心」がわれわれの奥にあるわけですから、それがさとりを開くための因になるわけです。
      それがこんど実践に展開する場合に「大悲」,すなわち偉大な慈悲となってあらわれます。
      現実面においていろいろ他人を救い助けるというはたらきも、そこに基づいて出てくるわけです。
      だから、「大悲を根本と為す」というわけです。
      そしてそれが現実に展開する場合には、いろいろの「方便」、すなわち手だて、道すじを通りますが、そのいろいろな道すじいうものは目的のための単なる手段ではありません。
      現実に展開するその展開のすがたそれ自体が絶対の意味をもっている、だから「究竟と為す」というわけです。
      つまり、絶対の境地というものは、かなたにあるのではない、個々の方便のあらわれるすがた、そのなかに絶対のものがある、と解釈できると思います。」
        (中村元『密教経典・他』, pp.129,130.)

  • 十縁生句
    • (げん)陽焔(ようえん)()(よう)乾闥婆城(けんだつばじょう)(こう)水月(すいがつ)浮泡(ふほう)虚空華(こくうげ)旋火輪(せんかりん)」(「住心品第一」)
    • 「ここに並んでいるこれら十の誓えは、大乗仏典のなかによく出てくるものです。
       私たち凡夫は、自分の持っているもの、あるいは自分の目の前にあるもの、これを固定的な実体だと思って執著しています。‥‥ しかし、その本性というものについて考えてみると、それは空であるということを大乗仏教では以前から説いているのですが、しかしただ漠然と空などという抽象概念を使って説いても、なかなかわかりにくいことですから、それで具体的に警えをもち出してきで説くわけです。」
        (中村元『密教経典・他』, pp.130,131.)
      「これはもともと大乗経典によく出てくるものですが、しかし真言密教においては、これは特別の意味をもつものとされ、凡夫の心は千変万化するが、その心のなかに仏の心がある、ということをいおうとするのです。」
        (中村元『密教経典・他』, p.132.)

  • 「如実知自心」
    • 「云何 菩提。謂 如實知自心。」
    • 「菩提」: 「さとり」
    • この論は,唯名論
    • 「‥‥誤解をしますと、これはひじように安易な現状肯定に陥ることになります。 一部の密教、ことにインドにかつてそれがありました。タントラの宗教というのがベンガルあたりを中心にして栄えたのですが、それがインドの後代の密教には影響しております。」
        (中村元『密教経典・他』, p.134.)

  • 成仏論
    • 成仏は可能──成仏マニュアルが有る
    • 修行 (実修実践)