Up | 放射能数値安全報道と数学教育の責任 | 作成: 2011-03-23 更新: 2011-03-23 |
算数のことばで言うと,「2km/時」「2リットル/秒」は<2量間の比例関係>であり,「6900km」「6900リットル」は<量>である。 ちなみに算数科では,「比例関係」をつぎの言い回しで教える
ところが,政府・マスコミは,
比例関係の2マイクロシーベルト/時と量の6900マイクロシーベルトを比べてみせているわけである。 翻って,日本国民の知力を,この比較を真に受けるものと見なしている。 学力の国際調査が行われていれば,つぎを報告書に書くことになるわけだ:
しかし実際,「比例関係」は,理解しにくい概念である。 教員養成課程の学生に,「数と量」の主題を半期15時間の科目でを授業する場合,「比例関係」がピークになる。 そして大学生でも,<身につく>というレベルにはなかなか至らない。 この授業の単位をとった学生でも,「2マイクロシーベルトはCTスキャン1回の放射線量6900マイクロシーベルトと比べてすごく小さい値,ぜんぜん安全」を真に受けている者は,けっこういそうである。 ちなみに,この「安全宣言」は,正しくはつぎのように述べ直さねばならないものである:
ところで,妊婦はX線撮影はダメということになっている。 ということは,件の安全宣言は,
ここまでパラフレーズしてみると,さすがに「安全宣言」のメチャクチャ加減は隠せないものになる。 なお,「2マイクロシーベルト/時」を引いてきた理由であるが,福島第一原発から約60Km北西に位置する福島市の放射線量(率) がつぎのように報告 (文科省HP) されているからである:
3月17日 09:20 7.0 3月17日 17:43 8.0 3月18日 10:08 8.5 3月18日 14:48 2.2 3月18日 18:05 8.0 3月19日 07:03 7.2 3月20日 09:10 5.0 3月20日 17:30 6.0 3月21日 08:49 4.5 3月21日 13:38 5.0 3月22日 09:01 3.5 3月22日 15:55 5.2 ちなみに,このデータから,この間の総放射線量を近似計算できる。 数学のことばでは「区分求積」の主題ということになるが,算数でもできる内容である。 学校教育は,「主体的に生きる」を謳い,その内容の一つとして「自分で考える」を謳う。 (実際,安直過ぎるほどに,謳う。) 政府・マスコミによる「2マイクロシーベルトはCTスキャン1回の放射線量6900マイクロシーベルトと比べてすごく小さい値,ぜんぜん安全」では,この「自分で考える」が試されているわけである。 同じ行動になるにしても,「わけがわからなくて,ひとから冷静にさせられる」と「わけがわかって,自ら観念する」とは違う。 数学教育は後者を目指している。 「2マイクロシーベルトはCTスキャン1回の放射線量6900マイクロシーベルトと比べてすごく小さい値,ぜんぜん安全」は,数学教育の課題がうんざりするほど大きいことを,見せつけた。 |