Up 「混ざる」 作成: 2017-06-29
更新: 2017-07-07


    同数の赤玉,白玉を,直方体の箱の左半分と右半分にそれぞれ入れる。
    そして箱を振る。
    長時間よく振ってやれば、赤玉白玉が均質に混じる。

    これは,「統計的に確率の高い状態が実現される」の現象である。
    「統計的に確率の高い状態が実現される」
    そこで,「エントロピー増大則」の事例になる。
    では,この場合<熱エネルギー → エントロピー>関数はどう考えればよいのか。


    「エントロピー」理論にあたると,「熱エネルギー」のことばは空回りしていることが見出される。 理論の中では「熱エネルギー」は形式であって,「熱」である必要はない。
    (Cf. 「エントロピー弾性」

    この形式に則ると,上の「直方体の箱の中で赤玉白玉が混ざる」では,<熱エネルギー → エントロピー>関数はつぎのように定めればよい:
    1. 赤玉白玉それぞれN個とする。
    2. Nに対する左側にある赤玉の数nの割合 H = n/N を,「熱エネルギー」とする。
    3. <左側にある赤玉の数がn>の組み合わせの数Wを,熱エネルギー H に対する「状態数」とする。
    4. eを底とするWの「桁数」S= log W を,熱エネルギー H に対する「エントロピー」とする。


    この<熱エネルギー → エントロピー>関数を,実際に求めてみよう。

    (1) n個の赤玉が左側にある組み合わせの数Wは,
       N! × N! /((Nーn)! × (Nーn)! × n! × n!)

      左側の赤玉がn個のとき,左側の白玉は Nーn個。  
      赤玉N個からn個をとる組み合わせの数は,。  
      白玉N個から Nーn個をとる組み合わせの数は,。  
      よって,n個の赤玉が左側にある組み合わせの数Wは:
        W = × Nーn
          = N! /((Nーn)! × n!) × N! /((Nー(Nーn)! × (Nーn!)
          = N! × N! /((Nーn)! × (Nーn)! × n! × n!)

    (2) S = ーM ( H log H + (1ーH) log(1ーH ) )
      ここで,M=2N (玉の総数)。

      S = log W
        = log (N! × N! /((Nーn)! × (Nーn)! × n! × n!))
        = 2 log N! ー2 log(Nーn)! ー 2 log n!
      スターリングの近似公式を適用して
        = 2 (N logNー N) ー2 ((Nーn) log(Nーn) ー (Nーn)) ー 2(nlog nーn)
        = 2 (N logNー N ー (Nーn) log(Nーn) + (Nーn) ー nlog n+n)
        = 2 (N logN ー (Nーn) log(Nーn) ー nlog n )
        = 2 ( ーn( log nー log N ) ー (Nーn) ( log(Nーn) ー log N )
        = ー2N ( n/N log n/N + (1ーn/N) log (1ーn/N) )
        = ーM ( H log H + (1ーH) log(1ーH ) )

    0 ≤ H ≤ 1 ( ⇐ H = n/N ) に留意して,S = ーM ( H log H + (1ーH) log(1ーH ) ) のグラフを描く。

    つぎが y=x log x + (1ーx) log (1ーx) のグラフであった ( エントロピー関数):
    そこで,つぎが S = ーM ( H log H + (1ーH) log(1ーH ) ) のグラフ ── 0 ≤ H ≤ 1/2 に留意:
    温度β = dS/dH をグラフに記入するならば:

    このグラフから,温度βと熱エネルギーHの対応グラフも読み取れる:
      β=0 のとき, H = 1/2
      βの増大と Hの減少が対応
      β= ∞ と H = 0 が対応

    実際,関数:β├→ H の式は,H = 1 / (eεβ +1 ) ── ここで,ε = 1/M。
      β = dS/dH
        = d(ーM (H log H + (1ーH) log (1ーH) )/dH
        = ーM ( ( log H+ H・1/H ) + ( (ー1) log (1ーH) + (1ーH)・(ー1/ (1ーH)))
        = ーM ( log H+ 1 ー log (1ーH) ー1 )
        = ーM log H/(1ーH)
      log H/(1ーH) = ーεβ
      ⇐⇒ H/(1ーH) = eーεβ
      ⇐⇒ H = (1ーH) eーεβ
      ⇐⇒ H (1+ eーεβ ) = eーεβ
      ⇐⇒ H = eーεβ / (1+ eーεβ ) = 1 / (eεβ +1 )