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5.4 身体化



 「知っている」(そのツールを知っている)は「できる」(そのツールを使える)を意味しない。逆も真で,「できる」は「知っている」を意味しない。ひらたく言えば,アタマとカラダは別ということだ。──ただし,いまはおおざっぱな言い方をしている。実際には,「できる」のない「知っている」はないし,「知っている」のない「できる」はない。

 その形をツールとして使えるようにすること,これはスポーツで一つの技術を自分のものにするのと同じである。課題は身体化(「身につける」),すなわち「形」に自分の身体を適応させることである。そしてこれの実践を表現することばが,「訓練」とか「練習」とか「鍛錬」である。

 このあたりのことはよく理解されており,改めて強調するまでもない。しかし,つぎのことは強調しなければならない。すなわち,「知っている」がないまま「できる」に向かうような指導が横行しているということである。

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