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6.1 「できる」と「わかる」



「形」の学習は,単純に,

 (1) 道具を知る/評価する
 (2) 道具を身につける
 (3) 道具を活用する

の三つの局面でとらえてよい。そしてこのうち,学習指導で欠落させてしまいがちなのが,(1) である。

 一般に,道具の活用は,ある段階まではノウハウの知識でこと足りる。しかし,主体的なあるいは高度な活用へと進むには,道具の潜在力を知ってこれを引き出す能力が,道具使用者に要求される。これは,別の言い方をすると,ある段階までは「できる」でやれても,それから先は「わかる」なしでは進めないということである。

 しかし,「わかる」は取っつきにくい。そして「できる」で済ませられるとなれば,「わかる」に向かうはずがない。こうして,「わかる」をパスするという学習の悪癖が形成される。

 「できる」はノウハウ的な対処のことであるが,学習の破綻はこの「ノウハウ」の破綻という形でやってくる。

 「ノウハウ」とは「こんなときにはこうせよ」という知識をいう。学習が進むと,「こんなときにはこうせよ」がつぎつぎと装いを変えて登場してくる。このとき「ノウハウ」一点張りでやってきた学習者は,コントロール不能に陥る。学習の破綻である。

 将来を生きようと思えば,ラクではなくとも地道に「わかる」につくしかない。当座のラクには早晩報いがくる。

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