7.1 わり算の立式(1)
(1) 問題
つぎの問題を考えよう:
A「りんごを3皿それぞれに同じ個数おくとき,6個では一皿何個?」
B「りんごを一皿に3個ずつおくとき,6個では何皿?」
さて,明らかに異なる印象がもたれるこの二つの問題に対して,式「6÷3」がひとしく立てられる。それはどうしてか。
「それはどうしてか」の問いに対し,はたして教師のどれだけが「形」が主題であると意識し,なおかつはかばかしい答えを出せるだろうか。問われているのは「わかる」である。
おそらく大部分の教師は,この主題を「わかっていない」とは思っていない。「できる」が「わかっていない」を隠蔽してしまうのだ。
(2) 問題から形を抽出
この問題でのキータームは「皿」である。これの意義は何か。
答えは,新しい「個」の導入である。すなわち皿におかれたりんご全体を改めて「個」と見るということである。
二つの問題はそれぞれつぎの問題に還元される:
A「何個を新しく個とすれば,もとの個で6個は新しい個で3個か」
B「3個を新しく個とすれば,もとの個で6個は新しい個でいくつか」
言えばややこしいが,図示するとつぎのようになる:
? 3
(個) ─→ <個> ─→ 6(個)
3 ?
(個) ─→ <個> ─→ 6(個)
ただし,もとの個を (個) で表し,新しい個を <個> で表している。
このときさらに,6(個) を新しい [個] にすれば,
? 3
(個)─→<個>─→[個]
│ ↑
└─────────┘
6
3 ?
(個)─→<個>─→[個]
│ ↑
└─────────┘
6
これが,最初の二つの問題A,Bの形である。同じく「6÷3」が立式されるが,問題の形は異なる。そして「問題の形は異なる」の説明になるのが,この図式である。
(3) 式を導出
ここで,記号「×」の用法として
m n
(個)─→<個>─→[個]
│ ↑
└─────────┘
m×n
が既習になっていれば,上の二つの問題はさらにつぎの問題に還元される:
?×3=6
3×?=6
そして記号「÷」の導入が
“「mとかけてnになる数」という(長い)言い回しを
「n÷m」のように(短く)言い直す”
であることを知っていれば,この二つの式の両方からひとしく
“?は6÷3”
が結論される。