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Up Hom 作成: 2018-02-08
更新: 2018-02-25


    速さは,時間と距離の対で表現する。
    例えば,(2秒, 3cm)。
    これらの対を,「同じ速さを表す」を同値関係にして,類別する。
    同値類の集合 (商集合) は,「Hom(時間, 距離)」と表されるところの線型空間 (ベクトル空間) になる。

    長方形の面積を,タテの長さとヨコの長さの対で表現する。
    例えば,(2cm, 3cm)。
    これらの対を,「同じ長方形の面積を表す」を同値関係にして,類別する。
    同値類の集合 (商集合) は,「タテヨコ」と表されるところの線型空間 (ベクトル空間) になる。


    この2つの一般形式は,どうなっているか。
    起点は,同じ体 K 上の2つの線型空間 U,V である。
    これの積集合 U×V に,つぎの二タイプの同値関係を考える: (u,v)(ξu,ξv)(ξK)(ξu,v)(u,ξv)(ξK) 前者による商集合は,K 上の線型空間 Hom(U,V) になる。
    後者による商集合は,K 上の線型空間 UV になる。

    UV は,テンソル積と呼ばれる。
    数学の「テンソル」は,「テンソル積」である。


    「テンソル」をカテゴリー的に位置づけるような物言いをするとき,その起点は, Hom(U,V)UV を同列に措くことである。
    Hom(U,V) に対し「ベクトル・行列の拡張」を言うことがナンセンスであれば, UV に対し「ベクトル・行列の拡張」を言うことはナンセンスなのである。
    そして,Hom(U,V) に対し「ベクトル・行列の拡張」を言うことは,ナンセンスである。


    数の割り算は,除数を逆数に替えて,掛け算になる。
    UV が「U×V」であるのに対し,Hom(U,V) は「V÷U」である。
    U の「逆数」── U の双対 U ──を用いて,Hom(U,V)UV,すなわち「U×V」になる。
     ( 「距離÷時間=速さ」)

    こういうわけで,同値関係の微妙な違いで二つに分かれた Hom は, 結局 に一元化されることになる。
    「量の公式の理論はテンソルの理論になる」というとき,「 の片割れであった Hom は考えなくてよいのか」の心配になるわけであるが,この心配は無用となる。
    ──晴れて,「量の公式の理論はテンソルの理論」となるのである。