Up これの数学は,「アフィン空間・アフィン写像」 作成: 2013-10-19
更新: 2013-10-21


《「量の比例関係のうえの位対応」から導出されるのが,「1次関数」》の数学は,「アフィン空間・アフィン写像」である:

  1. 「数の系」「量の系」「位の系」を,つぎの構造として考える:
        数の系: (数, +, ×)
        量の系: ( (量, ), ×, (数, +, ×) )
        位の系: ( 位, , ( (量, ), ×, (数, +, ×) ) )
        (構造表記の中で「数」「量」「位」と記しているものは,集合。)

      例1. 実数:(, +, ×)
    直線上の移動:( (移動, ), ×, (, +, ×) )
    直線上の位置:( 位置, , ( (移動, ), ×, (, +, ×) ) )
       2. 実数:(, +, ×)
    時間経過 (時間軸上の移動):( (時間, ), ×, (, +, ×) )
    時刻 (時間軸上の位置):( 時刻, , ( (時間, ), ×, (, +, ×) ) )

    なお,位の要素X, X′ と量の要素xに対する
        X′ = X
    の別表記として,
        X′ − X =
    を用いる。


  2. 量の一つの要素 (≠) を「単位」として固定する。
    量の任意の要素は,「単位の何倍」(「何」は数) の形に一意的に書ける:
        ×
    nを,「単位に対するの値」と呼ぶ。


      例1. 直線上の移動 ( (移動, ), ×, (, +, ×) ) において,「正方向に m (メートル) 移動」() を単位にする。
    このとき,任意の移動が,「何」(「何」は実数) の形に一意的に書ける。
       2. 時間経過 ( (時間, ), ×, (, +, ×) ) において,「未来方向に分経過」() を単位にする。
    このとき,任意の時間経過が,「何 」(「何」は実数) の形に一意的に書ける。


    位の一つの要素Oを「基準」として固定する。
    位の任意の要素Pは,「基準から量どれだけ」さらに「基準から単位の何倍」(「何」は数) の形に一意的に書ける:
        P = O = O ( × n)
    nを,「枠 (O, ) に対するPの値」と呼ぶ。


      例1. 高さ:( 位置, , ( (移動, ), ×, (, +, ×) ) ) において,「上方向に m (メートル) 移動」() を単位にし,「海水面」を基準にする。
    このとき,任意の高さが,「海抜何」(「何」は実数) の形に一意的に書ける。
       2. 時刻:( 時刻, , ( (時間, ), ×, (, +, ×) ) ) において,「未来方向に年経過」() を単位にし,「紀元」を基準にする。
    このとき,任意の時刻が,「紀元何」(「何」は実数) の形に一意的に書ける。



  3. 量の比例関係は,「一方が 2, 3, ‥‥ 倍のとき他方も 2, 3, ‥‥ 倍」の関係である。
    これは,二つの量の系 ( (量1, ), ×, (数, +, ×) ),( (量2, ), ×, (数, +, ×) ) に対し つぎの条件を満たす関数f: 量1 → 量2 のことになる:
        f( × n ) =f( ) × n  ( ∈ 量1,n ∈ 数 )

    上の二つの量の系が,つぎのように位の系に含まれているとする:
        ( 位1, , ( (量1, ), ×, (N, +, ×) ) )
        ( 位2, , ( (量2, ), ×, (N, +, ×) ) )
    fに対しつぎの条件を満たす関数F: 位1 → 位2 を,「比例関係f: 量1 → 量2 を伴うアフィン関係: 位1 → 位2 」と呼ぶ:
        F( P ) =F( P ) f( )  (P ∈ 位1 ∈ 量1 )
      あるいは「ー」記号を用いた別表記だと:
        F( P′ ) ーF( P ) = f( P′ ーP )  (P, P′ ∈ 位 )


      例.  時刻:( 時刻, , ( (時間, ), ×, (, +, ×) ) ) と高さ:( 位置, , ( (移動, ), ×, (, +, ×) ) ) を考える。
    時刻の枠に (紀元, ) をとり,高さの枠に (海水面, ) をとる。
    f:時間 → 移動 は,測度を考える。
    F:時刻 → 高さ は,つぎの条件を満たす対応を考える:
      時刻Pから時間q経ったときの高さ = 時刻Pのときの高さからf() 移動したときの高さ
    fは比例関係であり,Fはアフィン関係である。
    つぎは,f,Fの例である:
      f() = × 2(「毎年2m高くなる」)
      F(紀元) = 海抜5m
      F(紀元n年) = F(紀元) f( × n) = 海抜5m ( × 2) ×
       (「紀元n年の高さは,紀元のときの高さ5m に2m のn倍を加えた高さ」)

「アフィン空間・アフィン写像」は,数学的定式化を示されるとわけがわからないふうになるが,例が示すように,アタリマエにやっていることを数学にしただけである。