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一般に,n次元線型空間のベクトルは,n個の数 (スカラ) の組で表される。 そしてこれを「ベクトルの座標」と呼んでいるわけである。 いま,線型空間を実線型空間 (スカラが実数の線型空間) で考えよう。 n個の実数の組は,n次元実線型空間 n の要素 (ベクトル) になる。 このベクトルを「数ベクトル」と呼んでいる。 また,実線型空間 n を単に「数空間」と呼んでいる。 n次元実線型空間Eのベクトルとこれの座標の対応は,Eと n の<n次元実線型空間>の構造に関する同型対応になる。 そこで,Eのベクトルは n のベクトルと同一視できることになる。 Eのベクトルvに同一視された n のベクトルを, 「vの位置ベクトル」と呼んでいる。 3次元以下のベクトルの場合,矢線をこれの絵として用いていることができる。 特に,3次元以下の n では,数ベクトルの絵として矢線を用いることができる。 実際,高校の数学教科書には,数空間を「座標空間」のように表してその中に矢線を描いている図がのっている。 この矢線は,数ベクトルの絵ということになる。 (ただし,この絵の論理の説明は,結局「アフィン空間としての数空間」の概念を説明することと同じになるので,これを生徒に対して行うのは簡単ではない。) 高校数学で「ベクトル」を勉強させられる学生は,ただ教師の指導が悪いということで,ひどい目にあっている。 その「指導の悪さ」の一つに挙げられるものに,ここで述べている「数ベクトルの意味」を教えていないということがある。 数ベクトルの意味を理解するとは,<構成>の中の数ベクトルの位置を理解するということである。 学生は,数ベクトルの意味を知らずに数ベクトルを勉強させられている。 教師も,数ベクトルの意味を知らずに数ベクトルを勉強させている。 そこで,つぎのように問いたくなる:
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