Up 複素数の場合 作成: 2007-05-02
更新: 2007-05-03


    正負の数に対応する量は
      正逆2方向の向きと大きさをもつ量
    でしたが,これは
      直線上方向自由な向きと大きさをもつ量
    と見ることができます。(「自由」と言っても,正か逆かの自由しかありませんが。)

    この「直線上方向自由な向きと大きさをもつ量」の考えを延長すると,「平面上方向自由な向きと大きさをもつ量」(高校数学に出てくる「平面上のベクトル」) になります:

    平面上方向自由な向きと大きさをもつ量の比 (倍関係) は,つぎの2つの情報の組で表せます:
    1. 向きの変換に関する情報: どれだけの回転になっているか (角度)。
    2. 大きさの変換に関する情報: 大きさの比を既知の数で表す。

    すなわち,つぎのようになります:


(数学では,時計回りがマイナスで,逆がプラス)

    これが「複素数」のしくみです。
    ──「正負の数」のしくみの単純な拡張であることを,確認してください。


    しかし,複素数をこのように説明すると,「高校で習った複素数はこんなんじゃない。高校では a + biみたいに習った。」のことばが返ってきそうです。
    表現「a + bi」のしくみを,説明しましょう。

    ここに (θ, d) と表現されている比があります:

    左辺のベクトルをもとに xy座標を作成し,この座標の中に右辺のベクトルをおきます:


( y軸の正方向は「x軸の +90゜回転」のルールで決められる)

    そしてこのときの a, b を使って,「a+bi」を (θ, d) の別表現とします。


    練習として,具体的な例でやってみましょう:

    左辺のベクトルをもとに xy座標を作成し,この座標の中に右辺のベクトルをおきます:

    このときのa, bは,それぞれ 2 と 2√3 です。よって,(+60゜, 4) は 2 + 2√3 i


    高校で複素数を習ったひとは,実はこの2つの表現とその換算法も学習しています。 (しかしほとんどのひとは,これの意味を知らないで/意識しないで過ごしてきています。)
    複素数zの二つの表現a + biと (θ, d) に対し,zの偏角と呼ばれ arg(z) と表記されたのがθで,zの絶対値と呼ばれ |z| と表記されたのがdです。
    そして以下が,換算法です: