Up | 「構成」知らずの勇み足 : 「比例」の現行定義 の場合 | 作成: 2013-11-20 更新: 2014-03-26 |
学校数学のかけ算を,順序のないものにしようというわけである。 ( 『「かけ算の順序」の数学とイデオロギーとモンスター』) 「かけ算に順序はない」は,「構成」の概念をもたないことが原因でやってしまう勇み足の一例である。 「かけ算に順序はない」は,「かけ算は可換」を先取りしている (「論点先取」)。 実際,意味ないし規則の明示を以て積の2項の順序が定められているからこそ,可換/非可換のはなしとなる。 意味ないし規則を以て式を定めるプロセスが先ずあって,2項の順序を逆にした2つの式が同じ値であるかどうかのはなしになる。 可換/非可換は,順序の定義の含意 (implication) として,定理の形で述べることになるものである。 順序があって,可換/非可換である。 かけ算には順序がある。 当たり前のことである。 しかし「当たり前」は,「構成」の概念を訓練されていて,言えることである。 「構成」の概念をもたない者には,このロジックがそもそも意識の対象にならない。 論じるものにならない。 ( 「かけ算の順序」のモンスター) 《「構成」の概念をもっている・いない》は,学校数学の現前の捉えにおいて,重要な視点の一つになる。 実際,ふつうなのは,《もっていない》の方であって,《もっている》の方ではない。 そこで,「構成」の概念をもたないことが原因の勇み足を目にするときは,それはふつうに出てくるものだと達観してかかることになる。 さて,ここに「比例」の現行定義がある。 これも,<「構成」の概念をもたないことが原因の勇み足>の例になるものである。 「比例」の現行指導は,「比例関係」と「y=ax」を,2量の対応表を横に見るか縦に見るかの違いとして,同列に並べるものになっている。 「比例関係と y=ax に先後の順序はない」というわけである。 こうなってしまうのは,「単位の固定」を最初にもってくるからである。 数学だと,「比例関係 → 単位の固定→ y= a x」の順になり,「比例関係と y=ax には先後の順序がある」となる。 「比例」の現行指導内容は,授業者もこれを「比例」の内容だとして学習する。 これは,<数学を知らない>が学校数学に蔓延・固定する構造である。 一般に,学校数学はこんなふうにして数学を無くしていく。 ちなみに,学校数学が「かけ算に順序はない」になるのも,時間の問題であるように見える。 |
PDF 1.43 MB 作成: 2014-03-25 更新: 2014-05-19 要約 0. はじめに 1. 「比例」の数学 1.1 「量」の数学 1.2 「比例」の数学 1.3 「比例」の数学に準ずる「比例」指導の流れ 2. 算数科の「比例」 2.1 「倍作用」を封じてきたことの含蓄 2.2 現行の「比例」主題の構成 2.3 現行の「比例」指導の流れ 3. 「教育的ソルーション」と「数学知らず」 3.1 「教育的ソルーション」 3.2 「数学知らず」 4. おわりに |